《喜びは 段階踏んで 成熟し》

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 テレビ番組の中で,巷で話題になっていることを取り上げて,芸能人によるコメントを紹介するといったスタイルが定着してきたのでしょうか。井戸端会議ならぬ,テレビ端会議です。SNSであれこれ言われている中から,ある論争が取り上げられていました。番組の中で,どのように扱われたかについては関心はありません。
 子ども向けの漫画番組のアンパンマンの話の最後に,アンパンマンがバイキンマンをパンチで殴り飛ばすというシーンが定番です。そのパンチで解決するという暴力性が,問題視されているということです。紛争解決は話し合いでするのがよいのであって,暴力肯定に子どもが育ってしまうという危惧のようです。暴力を振るってきたのはバイキンマンの方で,アンパンマンは素直に対抗しただけです。目には目を歯には歯を,というパターンです。原始的というか,ごく単純な紛争対処法です。
 テレビ漫画の世界を,現実世界に持ち込んでしまうことは適切ではありません。虚実の感覚を曖昧にしないように,子どもは学習する必要があります。その教材として,大人がフォローすればいいのです。テレビに育ててもらっているという思いがあると,育ちの善し悪しをテレビのせいにするようになります。悪いやつをやっつける,それは正義のヒーローの基本的イメージです。悪いことをイヤだと感じることを,悪いことをすれば痛い目に遭うことを,学べばいいのです。
 子どもの中にはバイキンマンに親しみを感じている子もいます。バイキンマンがかわいそうと言います。欲望丸出しのバイキンマンに自分と同じ部分を見ているのでしょう。どうしてアンパンマンにパンチをされなければならないのか,そのことに気付くことによって,バイキンマンから卒業していくはずです。育ちはごく本能的な段階から少しずつ人間らしい段階まで進行していくものです。アンパンマンの世界を通り過ぎて,次の世界に入っていけるように,育ちのステップを揃えてやることです。子どもは一か所にとどまってはいないのですから。
 陰があるから明るさが際立ちます。寒さがあるから暖かさがありがたいと感じます。悪があるから善を求めたくなります。悪に踏み込まないためには,これが悪というものを知っていなければなりません。人は免疫を身に付けていくことで,健康を維持できます。心の免疫を獲得するために,今の大人たちも漫画という小さな試練を経験してきたはずです。環境をきれいにしすぎると,かえって脆弱になります。多様性という中には,いささかの濁りがあるものなのです。

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(2019年08月18日:No.1012)