《喜びは 向き合う暮らし 蘇り》

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 フランスでおんどり訴訟があったということです。訴えた原告はある島の別荘に越してきた夫婦です。「早朝の鳴き声がうるさい」と,隣家の飼い主に「雄鶏を別の場所に移せ」と求めました。裁判所は実地調査を実施し,鳴く時間は夫婦が主張するほど早朝とは言えず,声も大きくないと認定しました。その上逆に,話し合いの可能性を探らず不当に提訴した,と賠償金の支払いを命じたそうです。フランスの農村地帯でよく起こる古くからの住民と新たな住民との争い,と伝えられています。
 同じような状況はそこここにあります。新たな住民として移り住んで,旧い住民との付き合いもそこそこにできて,土地の暮らしに溶け込んでいます。郊外の暮らしを選んで移り住む人の中には,新住民の価値観を突きつけてくる人がいます。その土地の有り様を全否定するのではなく,新旧の融合による新たな価値を生み出す努力がなされるべきです。郷に入っては郷に従えと,旧来の価値を頑なに護るだけではなく,柔軟に変容する勇気が双方に求められます。環境を作り出すのは,自分たちなのです。
 価値の葛藤は随所に起こります。ネット社会になって情報の流れに新しいルートが組み込まれてきました。マンガという情報は古くは雑誌や単行本といった印刷による伝達でしたが,ネット世界で漫画村といった拡散サイトが設けられました。そこで問題は,情報料の支払い対象が転換してしまうことです。原作者や出版社を抜きにして,ネット上のサイト管理者が情報料を受け取ることになります。情報の海賊行為であるとして違法であり,運営者等は逮捕されています。
 情報には有料と無料のものがある,職業として生み出される情報には,それなりの対価が支払われるべきです。ネットは単なる情報の伝達媒体であり,価値の伝達はネット決済機関などの別系統にしっかりと依存すべきです。無料で得られる情報も公的なものは税金などで負担ができていますが,私的なものは好意で流布されており,感謝が必須です。無料で情報を得ていると勘違いしないためには,皆の役に立つかもしれない手作りの情報を無料で提供することです。お互い様であれば,問題は解消していきます。
 スマホの普及やゲーム依存といった環境の変動に巻き込まれて,人が人と直接向き合って関係を紡いでいく能力が劇的に低下しているようです。人となじめずに,パソコンと向き合って生きていこうという選択肢が生まれています。人が生きていく生活の場では,触れあうという形が基本なのに,人の間に器機が挟まってしまっています。この環境に馴染んだ子どもたちが作る社会は,どのようなものなのか,想像できません。旧い世代との共存がなされないままでは,不協和が頻発することになると,気付いてほしいものです。

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(2019年10月27日:No.1022)