《有難い 感謝を招く 緑信号》

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 依頼されている講演のシナリオを考えている中で,人の振る舞いの目印を設けられないか,という小さな問題を設定しました。振る舞いの良し悪しがあるとすれば,それぞれに対して推奨したり抑制したりする目印があれば,理解がくっきりとするはずです。思いついたのが交通信号です。進めと止まれのペアがあります。良いことには勧めの青信号を,悪しきことには止まれの赤信号を結びつけると,印象に残りやすくなるでしょう。
 そこで新たな問題が出てきます。交通信号には黄色信号がありました。どうする? 車は急に止まれないという交通標語が思い出されます。いきなり赤信号になったら,止まらない車は停止線を踏み越えて走り込んでしまいます。行動を止めるには,赤信号では遅いのです。止まることができるように,事前にブレーキを掛けて徐行をするようにという合図が不可欠になります。勢いを確実に止めるためには,勢いを緩める信号と,止まれの信号,すなわち,黄色信号と赤信号の二段構えが必要なのです。
 人の振る舞いには,してはいけないことがあり,法的に禁止されています。人のものを盗むことはしてはいけないことで,法という赤信号で禁止され,罰則もあります。ところで,人は日常の暮らしで,してはいけないことを記述している刑法の条文を見ながら,行動をしているわけではありません。刑法を知らないといつ法に触れるか分からないので,危ないはずです。赤信号を見ないで車に乗っているようなものです。それが可能なのは,黄色信号で徐行し用心して早めに止まっているからです。
 普段の暮らしで,振る舞いの場にある黄色信号とはなんでしょう。それは「人に迷惑を掛けない」という自制です。逆に迷惑を掛けることに頓着しない人は,付き合いを避けられて孤立します。誰しも迷惑を掛けられたくはありません。日本人は「済みません」という言葉を頻繁に使うと言われますが,迷惑を掛けてしまうことを意識してしまうからです。「どういたしまして」と受け流して気にしていないことを伝えています。図々しい人,端には迷惑な人です。黄色信号の世界では,法による禁止や罰則に至らなくて済んでいます。
 人の振る舞いには,良いこともあります。賞賛されるようなめったにない良い振る舞いの他に,した方がよいこともあります。良いことをしようと推奨する合図として青信号を想定することができます。ところで,普段の暮らしの中で,人にほめられるような良いことをしようとはしていません。した方がよいといった程度のことです。アリガトウと言われるようなことです。アリガトウと感謝されると,「どういたしまして」とかえって恐縮してしまうようなことです。そういう振る舞いを表す信号として,緑信号を想定してみます。
 人に迷惑を掛けないように気遣いをするだけでは,人との関係が面倒になったり重たくなりますし,避けたくなってしまいます。そうではなく,多少の迷惑はお互い様と,進んで迷惑を引き受けていけば,相手には喜ばれることにもなります。良いこととは,わざわざという部分を引き受けなければなりません。その背中を押すのが緑信号の役割になります。迷惑という黄信号だけではなく,お互い様という緑信号を持つこと,そういう展開をシナリオにしようと思っています。

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(2020年01月26日:No.1035)