《有難い 思い通りに ならぬ日が》

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 ある団体の懇親会で,初めての街の海辺の料亭を訪れました。昼食をいただく時間帯でしたが,座敷に上がると襖越しに隣の賑やかなカラオケの調べが溢れていました。和気あいあいとした雰囲気の中,時が過ぎていくと,食事も進み食器の片付けが手際よくされていきます。目の前のテーブルの上にはお湯のみとお箸だけになっていきます。ふと箸袋に目が止まりました。お店の名前と何やら動物の線画が描かれています。
 あまり上手とは言えない絵でしたが,ネコのようです。5匹のネコが2匹ずつ大きさが大と中とに,1匹が小さく描き分けられていました。左から右に向かってネコが並んでいるのですが,気になったのは,左端の小さなネコがこちらを向いて笑っているのに,残りの4匹は向こう向きで背中を見せていることでした。描かれているネコたちは背中でなにを訴えているのでしょう。小さなネコだけがこちらを向いて笑っているのは,なぜなのでしょう?
 帰り際に,見送りをしてくださっているお店の方に伺うと,女将さんに尋ねられて,特に意味はないというご返事でした。よく聞かれるんですと,若いお店の方が話して笑っていました。そんなことに疑問を持つ人っておかしい,といった風情です。お店の箸袋に後ろ姿のネコを描こうと思ったのは,どういうことだったのでしょう。右端の大きなネコの背中に朱色の印影らしいものがあります。描いた方の印でしょう。それなりの覚悟のある絵であれば,意味があるはずです。
 お店を出てしまうと,疑問は帰り道の風景の中に置き去りになっていきました。
 家に帰る途中の電車が,乗換駅の2つ手前の駅で止まりました。先の駅で人身事故があり警察に連絡したところですとのアナウンスが聞こえてきました。しばらくすると,今警察が来て現場検証をしています,と車内放送があり,これまでの例だとT時間ほど掛かっていますという情報と,別経路の案内などが流されました。電車から降りて,タクシー乗り場に向かって帰路をつなぐことになりました。日常ではない一日を過ごしました。
 気替えのために背広のポケットの中身を出していると,箸袋が出てきました。疑問が再登場です。どうしようか,迷いながら眺めています。

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(2020年02月09日:No.1037)