 家庭の窓
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お茶にしようといって休憩に入るほど小休みの間食にお茶が定着しています。いつ頃からこのような風景になったのでしょうか？
奈良時代にお茶を飲む風習が始まりました。この時代の喫茶法は茶の葉をついて固めた団茶を，ひいて粉にしてお湯を入れて煎じて飲むものでした。やがて，茶の葉に湯を注いで飲む宋代の点茶法が鎌倉時代の禅僧栄西によってもたらされました。さらに明恵によって植えられた栂尾茶をもとに，南北朝時代には畿内に多くの茶の産地が生まれ，中でも宇治茶は桃山時代に天下の茶となり，茶の湯の世界が生み出されました。
庶民の間で喫茶が盛んになるにつれ各地で茶の栽培が行われ，東海道では駿河茶，九州では八女茶が世に知られていきます。その駿河のお茶商人が，よいお茶はみな売れてしまうが，売れ残る二番茶を売りやすくするために「茶柱が立つと縁起がよい」と触れ回ったために，受け入れられて広まっていったということです。玉露や煎茶などはぬるい湯を差して時間を掛けるから茶柱は立ちません。そもそも茶柱がありません。一方葉の多い茶柱のついた番茶は，熱いお湯でさっと出すから茶柱が立ちやすいのです。
こうして定着してきた茶柱も，いろいろなバリエーションがあるそうです。「茶柱が立ったことを他人に言うと，せっかくのよい事が他人に移ってしまう」とか，「立った茶柱は，他人に知られないうちに飲み込んでしまわなければならない」とか，「茶柱はそっと拾い上げて，着物の左袖に入れておくとよい」などです。ただ，お客様に出すお茶で茶柱は立たないほうがよいようです。茶柱の立つお茶は二番茶ですから，おもてなしとしてはいささか粗末になります。
茶柱縁起が昔のＣＭであったとご存じでしたか？ 暮らしのささやかな楽しみを興ざめさせてしまったかもしれません。発端は人の欲であったかもしれませんが，受け取る方が仕合わせに感じているから，広まっていったのでしょう。災い転じて福となると言うこともできるでしょう。終わりよければすべて良し，ということにしておきましょう。
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