《有難い 言葉の呪縛 解き放つ》

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 縁を切ろうとしてもなかなか離れられない男女の仲を腐れ縁と言います。ところで,縁が腐れるとボロボロになって切れるはずですが,切れないというのは一体どういうことでしょう。元々は鎖縁であり,切れない鎖でつながっている仲を言いました。鎖が腐れになまってしまったのです。
 欠点があるところでバランスが取れている仲,似た者同士の男女の仲を割れ鍋にとじ蓋と言います。割れ鍋は割れて壊れた鍋のことですが,とじ蓋とはどんな蓋でしょう。閉じる蓋であれば釣り合いが取れません。とじ蓋は綴じ蓋と書いて,つなぎ合わせた,修繕した蓋のことです。
 遠くて近きは男女の仲。遠いように見えていても,ちょっとしたきっかけで一気に深まるのが男女の仲です。よく知られている言葉ですが,これを言いだしたのは一体誰なのでしょう。よい恋人に恵まれなかった清少納言です。枕草子に「遠くて近きもの,極楽。船の道。男女の仲」とあります。
 男女の仲には,両方が望むものと,一方だけが望むものとがあり,後者は不幸を招きます。極端な事例ですが,こんなこともあったのです。1282年3月30日,フランス兵が若くて美しいイタリア女性を乱暴,殺害するという事件が起きました。その知らせを聞いて,おさまらなかったのがその女性の恋人です。やがて,彼の怒りは,フランスの圧迫に苦しんでいた人々の同情を買い,大規模な抗議運動にまで発展しました。そのときの合い言葉が「Morte alla Francia Italia anela!」(フランス人に死を,これがイタリア人の叫びだ!)です。この言葉の頭文字を取るとMAFIA(マフィア)となります。
 男女の仲という言葉を何の違和感もなく普通に使っています。男女の仲という関係が当たり前だと思い込んでいます。言葉は意識を切り分けて表現しています。言葉を使っている内に意識が固定化してしまいます。
 最近LGBTが問題になっていますが,男女の仲というレンズを通すと違和感を感じている多数派がいます。人間関係の中で,男女の仲以外のパターンを望むこともあり得るということを知らされています。言葉には例外があるという余裕を持つことが大切のようです。

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(2021年06月06日:No.1106)