《有難い 言葉違うも 同じもの》

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 人工照明を使って,一日の昼夜の長さを自由に調節できる箱の中で朝顔を育てると,一日を20時間にしたときに朝顔はいちばんよく育ち,花も最も早く咲きます。一日の長さが長くなればなるほど育ちが悪くなり,また,短くしても発育が遅れるそうです。
 常識では自然界の時間通り一日24時間が植物にとって最適のはずです。実際には違っていました。
 メロンの温室栽培で,室内の二酸化炭素の量を自然に存在する300ppmの3倍強である1000ppmくらいにしてやると,メロンの生長がずっと早くなり,実も大きく,表面の網もよく張るそうです。
 4億年前の地球の自転は今より速く,一日は20時間でした。それが月の引力との関係でブレーキが掛かり,次第に自転速度が遅くなって一日が24時間に伸びました。大気も炭酸ガスの量が現在よりずっと多かったと推測されています。
 朝顔もメロンも,祖先は4億年前にはもう地球上に現れていたということで,遺伝子の中にその頃の記憶が刻まれていて現在まで伝えられていると考えることができます。自然界における情報の再生産の正確さが驚くほどです。
 人間界の情報はどうなのでしょう。レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた「最後の晩餐」という有名な絵には大きな嘘があるそうです。それはみんな椅子に座って食事をしていることです。キリストが生きたローマ時代には,床や長椅子に寝そべって,手づかみで食べていて,この絵のような光景はあり得ないのです。もうひとつ,テーブルにあるオレンジも,ローマ帝国にはまだ入っていなかったと歴史家の調査で分かっているそうです。
 時代考証という言葉がありますが,過去の物事を表現する際には,細部の表現までその時代を反映させなければなりません。生きていた時代を丸ごと考証することが大事なのです。時代という大げさな時の流れではなくても,世代という中で,人が扱っている情報は曖昧に変化してしまいます。
 昭和生まれはアルファベットの筆記体を書けるが,平成生まれは習っていないので知らない,アベックという言葉や,Dをデーと発音したり,小指を立てて彼女,親指を立てて彼氏,美容院をパーマ屋さん,昭和という時代に張り付いた表現もあります。情報社会が進行する中で,いつまでも変わらない情報としてどのようなものを持ち合わせて,伝えていこうとしているのでしょう。

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(2021年06月13日:No.1107)