《有難い 江戸の命が 今ここに》

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 暇つぶしに開いてみた一冊の本,神田忙人著の「江戸川柳を楽しむ」から,いくつか引用をしてみます。

○いいかげん 損得もなし 五十年
 五十年の生涯を回顧すると,損と得とはだいたい同じ程度だったなという思いです。
○遣唐使 後は茶漬けを くいたがり
 肉食を汚らわしいとして嫌った時代,遣唐使はやむを得ず食べるだろうが,茶漬けで口をさっぱりさせたはず。
○鬼ヶ島 まで行かず 寝付く子
 桃太郎の話を寝物語にしているが,すぐに寝てしまう。
○どらの詫び 大工のするが しまい也
 どら息子を閉じ込める座敷牢の仕事を頼まれた大工が気の毒に思い取りなすが,親は見限り,親戚もあきれてわびをしてくれる人がいない。
○おやの気に なれとは無理な しかりよう
 ちょっとは親の気持ちにもなってみろと息子を叱る。それができるならどら息子にはならない。
○子を持って 近所の犬の 名をおぼえ
 毎日見ているのに名を知らぬ犬。子がその犬と遊ぶので名を知った。
○けんとうを 聞いてぬかみそ 亭主出し
 床についている産婦が亭主に場所を教えている。
○後添えの 連れて来るのは 女の子
 離縁するとき男の子は父親の元に残り,女の子は母の元に引き取るのが一般の習慣。この場合の後添えは離縁されたものであろう。
○女房は なんぞの時を 待って居る
 今はだまされたふりをして黙っているけれど,そのうちにぎゅっという目に。

 人の思いは江戸の時代と今も変わりませんが,人が成す所業は社会の時代背景に彩られているようです。川柳に描かれている具体的な形は江戸らしさがありますが,似たような思いを今の人もしているなと思いませんか。今の自分が大事にしている命は,江戸の人から代々の苦労によって受け継いできたものだから当たり前です。日々の暮らしを大事にする意味が,江戸を感じることから見えてきます。

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(2021年07月11日:No.1111)