《有難い 思いとりした 思いやり》

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 熱い食べ物が苦手な人を猫舌といいますが,実際に猫は熱いものが苦手のようです。猫は味覚が発達しており,舌の神経の3分の2が舌先に集中しています。舌先の表面には味蕾という味センサーが密集しています。この味蕾は非常に敏感であり食べ物が熱すぎると細胞が痛んでしまいます。猫舌は味蕾細胞を痛めないための自衛策なのです。もっとも野生の動物は調理した熱い食べ物を口にする機会は皆無で,せいぜい補食する動物の体温までです。
 子どもは甘いものが好きですが,味覚が未発達のためではありません。子どもの味覚神経は大人より敏感であり,口当たりのよい甘味を一番美味しいと感じるようになっています。さらに,子どもは,舌だけではなく,口蓋やのど,頬の内側など,口の中全体で味を感じています。大人にはちょっと苦味があってうまいというものでも,子どもにとってはとても苦くて食えたものじゃないということになります。大人の味覚は鈍くなっているということです。
 立場が変わると,物事は同じではなくなるものです。言われて分かる,聞いてみてはじめて分かる,思い込みには注意したいものです。
 心豊かな関係には,思いやりが必要です。思いやりとは,自分の思いを相手にやるということで,相手の立場には転換していません。自分の思いをやるのではなく,相手の思いを取り込むこと,言い換えると思いとりが大切になるでしょう。相手の思いなど分からないから,自分だったらという思いを取りあえず示すことになります。それが功を奏するためには,同じ局面にいるという前提が必要です。事情は人それぞれであるという状況のもとでは,いきなりの思いやりは有り難迷惑になります。
 乗り物の席を譲る場合に,いきなりドウゾと譲って,相手に拒否されてしまうことがあります。哀れと思われたことが嫌だということなのでしょう。一方で,見ず知らずの人にドウゾと言うことにはちょっとした勇気も要ります。それができなくて居眠りに逃げている人もいます。思いやりを届けたいが相手がどう受け取るか分からないのであれば,単に席を放棄して相手に受け取りを任せればいいのです。席を譲るというのではなく,席が空いたという状況にすればいいでしょう。ドウゾの押しつけは消えます。
 それでは余りに素っ気ないのであれば,「代わりましょう?」などと,相手に問いかけることです。相手に決める機会をきちんと与えることです。いきなりドウゾと押しつけてくる上から目線的な物言いが拒否されるのです。人に指図されたくないという誰もが大事にしている権利があります。そのことを認めるようにする,それが相手の思いを受け取るという思いとりです。思いやりと思いとりが一致するように,そうしないと「小さな親切大きなお世話」となります。

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(2021年10月17日:No.1125)