《有難い ものに動じる 暇がなく》

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 アイルランドの文学者,脚本家,劇作家,評論家,政治家,教育家,ジャーナリストと多彩な才人であるバーナード・ショーが語っています。「半分だけ飲み物の入ったビンをテーブルに置きなさい。楽天主義者はそれを見て,『しめしめ、まだ半分ある』,厭世主義者は『ちぇっ、もう半分しかない』という」。
 わが日本の江戸時代の小咄です。ある男が江戸に出て行きましたがすぐに舞い戻ってきて,言いました。「江戸というところは住みにくい。水にまで金を出して買わなければならない」。同じく江戸へ出て行った別の男が言いました。「江戸は住みよいところだ。水を売ってでも生活ができる」。
 実業世界での小話です。かつてのアフリカに視察に出掛けた製靴会社の二人の社員が,会社に報告をします。一人は「アフリカでは靴は売れない。誰も靴を履いていないから」。もう一人は「アフリカでは靴は売れる。誰も靴を履いていないから」。
 ごく普通の小学生の男の子に近所の小母さんが話しかけます。「学校のベルは授業の始めと終わりに鳴るのね」。その子が首を横に振って言います。「ううん,学校のベルは休み時間の始めと終わりに鳴るんだ」。あることの終わりは次のことの始まりでもあります。卒業を意味するコメンスメントは、本来は始まりという意味でした。
 物事が相反する性質を同時に持っていることを,何となく知っていたはずです。普段に意識しているわけではないでしょうが,改めて言われたらそうですねと受け入れざるを得ません。自分が正しいと思っていることは,どんな場合でも正しいとはなりません。そこで,人の話は半分聞く,そのようなアドバイスがあります。疑うというのではなく,逆の状況が有り得るということを想定すれば,話し手のペースに巻き込まれることはないでしょう。
 ピンチはチャンス,逆転の発想,失敗は成功の元,相反する物事がつながっていることに気付きなさいという励まし,注意の声が掛けられます。悪い状況を良い状況に転換することが勧められていますが,逆になることも現実には起こります。成功に酔いしれていると失敗が待っていたり,得したとほくそ笑んでいたら大損したり,好事魔多しという局面もあります。
 夜が過ぎて朝が来て日が暮れていくように,どんなに転んでいっても,転び続ける事態に添い続けて,欲はなく決していからずいつも静かに笑っている,そういう心境でいることが心穏やかな日々を過ごすコツなのでしょう。

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(2022年01月16日:No.1138)