家庭の窓
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観光地などで外国人が騒いでいるのを見かけて,「外国人は本当にマナーが悪い」と腹を立てている人がいます。同様に,小さな子どもが騒げば「子ども連れはうるさい」と,怒ったりもします。実際には外国人や子ども連ればかりでなく,成人の日本人で騒がしい人々はたくさんいます。けれど,「外国人は」「子どもは」などとひとくくりでレッテルを貼ってしまいがちなのは,どうしてなのでしょうか。
これは,少数派に対する誤った関連づけという心理が作用しています。人は目立つ存在に対して,極端な判断を下す傾向があるのです。心理学者ハミルトンらの実験に,次のようなものがあります。大集団と小集団を想定し,被験者に,人間の日常の行動について,どちらの集団の人間が行ったものかを予想させる,という記述実験を行いました。すると,日常的に好ましい行動に関しては大集団の人が,好ましくない行動に関しては小集団の人が行ったという回答が多くなりました。
これは,小集団が少数派であるということと,好ましくない行動が少ない行動様式であるという二つの関連の項目が,「少ない」という共通項によって誤って関連づけられてしまったのが原因で行われた評価です。こうした認知のゆがみは,人に対する偏見や誤解などの原因になります。人種や国籍,性差別,年齢や職業による差別などは,こうした認知のゆがみから生じていることが少なくありません。このような,自分以外の少数派に対する偏見を外集団認知の錯誤というそうです。
個人の見解に止まるのであれば,錯誤の影響は個人が引き受けていくだけです。ただ,集団の意思決定に関わると危険な方向に逸れていくことがあります。集団極性化現象というものです。この場合,集団は意思の統一を目指す傾向が強く成員は個人的な疑問を抑えます。そして,自集団の道徳性や将来を過度に信頼しつつ,他集団への蔑視を始めます。
原因として,同じ意見を持つ人が集まるような場所,また集まってできた集団では,それに反対する人が少なく,その集団内で自分がより進んだ価値観を持っているとか,より高い徳性への欲求から,互いが当初の傾向よりも強調された意見を出し合うことで,よりリスキーな方向へ極性化してしまうと考えられています。ネットにおける炎上をもたらしてしまうのも,この思考の錯誤です。いいねを求めたり,フォロワー数の多さを誇示したり,多数派であることにどれほどの確実な論拠があるのか,ときどき検証をしてみることです。
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