家庭の窓
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「男と女とどちらが賢いと思いますか」と問われて,ショーペンハウエルは「もちろん,女ですとも。だって女は男と結婚します。だが男は女と結婚するんですからね」。誰と結婚するか,それは自分が決めています。かつては,政略結婚という言葉があったように,結婚する本人以外の人が決めることもあったようです。お見合いという端緒から結婚に至ることもありますが,最終的に決断しているのは自分です。
人生は選択に対する決断の連続です。今日のおかずは何にしようか。自分の思うように決めることができれば幸せですが,そうでないときは不幸せです。朝が来てまだ寝ていたいのに起きなければならないという苦渋の決断を迫られることがありますが,それでも,嫌々ながらも結局は自分で起きなくてはと決めています。
1858年のリンカーンによる演説では,「自分から分かれた家は成り立たない」と述べて,連合国家としての合衆国はすべて奴隷州になるか,あるいはすべて自由州になるかを選択すべきとしました。slavery(奴隷であること)という言葉の対義語はfreedom(自由であること)です。この対義を簡単に表現すると,決定権の有無と考えることができます。
ワタシが幸せに生きていく大事な要件は,「ワタシのことはワタシが決める」ということです。その「ワタシの決定権」は自らに由ると表現されて「自由」が想定されています。個人の決定が具体的に実現されるかどうかは置いておくとして,先ずは自ら決めることが尊重されていることが大事なことなのです。
社会的な生活では,自由が尊重されていますが,それはわがままとは違います。あるものをほしいと思って手に入れると決めても,近くにそのものがなかったり,既に誰かのものになっていたり,大きさが合わなかったり,いろんな事情があって適わないことがあります。そのときは,別のものに代えるか,時期を待ってみるか,あきらめるか,新たな決定をすることになります。状況に合わせた決定を続けることができる,それも積極的な自由なのです。
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