家庭の窓
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ダーウィンは結婚することと結婚しないこと,それぞれの利益と不利益のバランスシートを作成し,そのノートにはこれが問題だ″というタイトルがつけられていました。
「結婚すれば親戚を訪問したり迎えたり,おそるべき時間のムダ。結婚しなければ社交界へ出るのは少しですむ。子どものことで金をつかわないし,心配もしないですむ」「生涯働きづめで何も残らないというのは耐えられない。だが,妻も子もなく一日中孤独でスモッグによごれたロンドンにいることも恐ろしい。暖かな暖炉のそばのソファーにやさしく美しい妻とすわること。そして本を読み,音楽を聴く。やはり結婚か。そう結婚だ」
この結論に到達してからも,ダーウィンはまだ「毎日妻と散歩しなければならないとすると,わたしの仕事のすべてをどう処理するか。それにフランス語も学べない。大陸やアメリカを訪れることができない」などとメモしています。
しかし,ついに決心し,従姉のエンマ・ウェッジウッドに結婚を申し込んで結婚式をあげ,11か月後には長男が生まれています。エンマは学者の妻として,研究のさまたげにならないように尽くし,ダーウィンのこれが問題だ″は杷憂に終わりました。
インテリといわれている人の弱点である「考えすぎ」という特質が現れた例です。あれこれ先のことを考える力を人は与えられていました。普通には,その際に2通りのメガネのどちらかを選んでしまいます。楽天的か悲観的か。自分にとってよいことを想定していけば楽しくなりますが,わるいことを想定してしまうと悲しくなります。どちらのめがねを掛けたかによって物事の見え方は違ってしまいますが,それは自分が選んでしまったイメージでしかありません。インテリは欲張って両方を見ようとしています。
あらゆる状況で予想できる事柄のすべてが実現するはずはありません。案ずるより産むがやすしという言葉が現実的です。ものごとが起こっていくプロセスは,たくさんの前提や状況の変化に左右されています。いわゆる偶然に起こる出来事が紛れ込んでくるのは,人の考えが及ばない領域があるということです。考えるのはほどほどにして今の状況での可能性を見つけて選択して出会う現実に向き合うという覚悟をするしかありません。
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