家庭の窓
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「雨降って地固まる」という言葉があります。夫婦ゲンカのあと仲なおりした夫婦の状況をいうような時によくもち出される言葉です。
雨が降って地面がドロドロの泥沼となっても,その後は土がきちっとしまって固くなるように,激しいケンカをしてお互いに普段は言えなかったことを,思いきり相手にたたきつけたことで理解が深まり,以前にも増して仲がよくなったりすることがあるものです。夫婦にかぎらず,世の中には周りがハラハラするほどの大ゲンカをした者どうしが,そのケンカをきっかけとして無二の親友になる,という例もありました。
しかし,最近は大げんかの程度が歯止めを失って,取り返しのつかない事態にまで至ってしまうようです。雨が降る程度ではなく,大嵐になって根こそぎ壊れてしまっています。雨降って地固まるという成り行きには,地を固める日光や風といった第三者の関わりが不可欠です。お互いを冷静にさせ,相手の言い分に耳を傾ける温もりを醸し出す作用があるから,地固まるという修復が可能になります。
キレやすくなっている上に不信感にとらわれている関係のもつれは,当事者二者間だけによる自己修復は期待薄です。もつれをそれとなく一旦預かってくれる仲裁役が見当たらない今の状況では,第三者の意識的な関与が必要になります。お互いの言い分を静かに通訳する者がいてくれると受け入れやすくなります。相手の思いを幾分なりとも配慮することができれば大概の行き違いは解決していくという経験を,子どものうちから経験していってほしいものです。
自分の正義を押しつけることの不確かさや,他者の思惑と自分のものとのすれ違いの大きさ,ごく当たり前の違いを前提とするのが,人間関係です。普段からいろんな人と話していると,そういう事は普通に経験していくことが出来ます。ところが,ネット上で自分の思惑に合う情報に偏向していると,人に対する姿勢が独断的に固まっていきます。表現することだけに集中していると,自分の表現が他者にきちんと伝わっているかという確認が疎かになります。伝えたつもりでも伝わっていないことが当たり前にあるのです。
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