《有難い 新語が今を 言い当てる》

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 アメリカ大統領の官邸は,1800年,第2代ジョン・アダムスの時につくられました。ところが,米英戦争の戦火は首都ワシントンにも及んで,1814年大統領官邸も炎に包まれて大半が焼けてしまいました。翌1815年に,この官邸は改築されましたが,改築されない部分は焼け焦げたままで見苦しく放置されていました。
 これを眺めていた時の第4代大統領ジェームス・マジソンは,何事かブツブツつぶやいていましたが,やがて作業着に着替えて,焼け焦げ跡を隠すべくペンキ塗りを始めました。大統領だけにペンキ塗りをさせておく訳にもいかず,お付きの者一同も一緒になって励みました。実はこのマジソン大統領は,ペンキ塗りが大好き得意だったということです。
 その結果として,真っ白に変身した大統領官邸,以後はホワイト・ハウスと呼ばれるようになりました。しかし,これが正式名称となったのは,第26代のルーズベルト大統領が,便せんに「ホワイト・ハウス」と印刷させてからのことです。
 言葉の大事な機能に名付けがあります。アメリカの大統領官邸という説明熟語をホワイトハウスと2音語にまとめて名付けたのです。簡単な表現があれば,それが使い回されて,やがて定着していきます。
 固有名詞だけではなく,人の行動形態を表す言葉も同じです。性差による差別意識が生み出す嫌がらせという負の行動に目が向いた時,セクシャルハラスメントという新しい言葉で名付けられました。名付けによって,負の行動が見えるようになり,存在が意識できるようになりました。
 意識が広まるにつれて,セクシャルハラスメントはセクハラと短縮されて,ごく日常に広がっていきました。その後を追うように,デートDV,ヘイトスピーチといった新語が流布すると共に,人権思想が徐々に広まっています。このような個別の人権だけではなく,本丸の人権の周知を図るために,人権侵害の英語 violation of human rights を略すのはスマートではないので,人権の「ヒューマンライツ」を真っ正直に広めることもやってみることです。カタカナ表記であるという点は馴染みにくいということもありますが,世界共通であるというメッセージを伝えることも大事です。関係者が普通に言い出さなければ,言葉は広がらないのですが?

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(2022年09月18日:No.1173)