家庭の窓
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景気の冷え込みが永く続き,体力のない組織は走ることを止めていきます。国政レベルの話では,「景気回復なくして構造改革なし」という立場と,「構造改革なくして景気回復なし」の立場がつばぜり合いをしています。
二つのキーワードにつながる情報蓄積が貧弱な市井の凡人には,なにやら小難しくて,いずれに組みするか,立場を決めかねています。組みすると言っても,徒党を組んで論陣を張るなどとはおこがましいことで,どちらの論を個人的な思考尺度に取り入れるかといった程度のことです。
Aが無ければBができないという簡単な論法です。下世話な話に翻訳すれば,「愛がなければ結婚できない」というのか,「結婚しなければ愛は成就しない」というのか,どちらが正しいかという問題です。
もちろん愛と結婚が密接な関連を持つべきだという前提があります。その前提を外してしまえば,愛と結婚を別のこととして,それぞれに使い分けることも可能です。結婚しなくても愛を貫けるし,愛など無くても結婚は可能です。ただ,世間的にはマイナーであり,いわゆる日の目を見ない仕儀となります。真っ当な関係という尺度にとらわれるなら,前提は認めざるを得ないでしょう。
そこで,少し構造の中身に踏み込むことにします。「愛が無ければ結婚できない」というのは,結婚が目的になり,愛はその条件に限定されています。一方で,「結婚しなければ愛は成就しない」というのは,愛が目的で結婚はその条件です。つまり,結婚したいのか,愛を成就したいのか,どちらを目的にする立場かという選択です。
愛=景気回復,結婚=構造改革と対応させれば,景気回復をしたいのか,構造改革をしたいのか,という目的意識の違いになります。景気回復が目的ですから,構造改革なくして景気回復なしという立場が,論法としては正論になります。
この話はもっと泥臭いものです。愛などという無償のボランティア精神が絡むような高尚なレベルではありません。金を儲けたいが,そのためには店舗を改装しなければならない。ところが改装するには金が必要であり,そこでまずは金儲けをしなければ改装もできない。つまり,「金儲けしないと改装できない」と考えるか,「改装しないと金儲けできない」と考えるかの違いです。ジレンマに陥っているのです。この事態を打開するには,第三番目の条件が絡んで来る必要があります。結婚を控えた二人に外国出張の話が持ち込まれたといった切羽詰まった事情です。店舗が老朽化してもう保たないという切羽詰まった背景がそこにあります。
思考の路頭に迷ったら,第三の事情がどちらに緊急性をもたらすかを見てみると,案外とすっきり決着が付きます。生き延びるために必要なものはどちらかが決まってしまうからです。
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