《有難い ことの向こうに 人が居て》

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 明暦3年の大火事で江戸の町は焦土と化しました。ほとんどの江戸っ子は着る物も満足になくて,衣服が飛ぶように売れました。
 京で呉服商を営んでいた大文字屋の下村彦右衛門は,この機会に江戸に出ようと思い,番頭を江戸に行かせ市場調査をさせました。その後,江戸で呉服屋と京呉服の取引の話をまとめると,丸に大の字を染め抜いた萌葱色の大風呂敷を大量に作りました。
 やがて,その派手な風呂敷は動く看板となって,東海道や江戸で人々の目にとまるようになりました。大丸の風呂敷が江戸っ子の噂に上るようになった享保2年,大文字屋は大丸と店名を改め,江戸大伝馬町にも店舗を構えました。大丸の名はすでに江戸市中に広まっていたために,江戸っ子の間では「大丸の風呂敷の店ができた」とたちまち知れ渡り,物珍しさも手伝って,新開店ながら繁盛しました。
 風呂敷は,江戸時代の優れたパッケージ用品であり,それに着目して商標を大きく染め抜くのは,極めて斬新なアイデアでした。江戸っ子の目を引いたのも自然なことであったのです。
 さまざまな組織や機関が多くの人と関わりを結ぶ目的で啓発活動をすることがあります。その一つの方法として物品を配ることがあります。なるべく使ってもらえる物をと考えますが,同時に何を覚えてもらうかということも大事です。先ずは問い合わせなどの連絡をお待ちしていますという思いで,電話番号をお知らせするようにしています。何かが足りないという感じが拭えません。それは連絡を誰が受け取るのかという人称が伝えられていないということです。大丸という屋号によって,それを支えている人が感じられます。同じように組織や機関を表す屋号を知っていただく啓発をすることが必要でしょう。
 情報社会の中では,有名な屋号を詐称する輩が簡単に紛れ込んでいるので,多くの人は用心しています。信頼してもらえるような啓発の方法とは,顔が見えることでしょう。それが人を見極める最低限の情報なのです。匿名や匿顔の啓発には近寄らないことです。

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(2023年05月07日:No.1206)