《肥えた舌 あっという間に 身を肥やす》

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 身の程を弁えるという言葉がありました。身分的なニュアンスがあるので,日陰にしまい込まれてカビが生えているようです。程とは限りある大きさを示していますが,文字通りに身の程と考えれば,人の容量という意味にもなります。
 痩せる薬の副作用が騒がれていますが,何とも不思議な出来事です。程度を越えた不健康な肥満を治療するというのならまだしも,見てくれという曖昧な眼鏡による太めな体型をスリム化しようという気持ちが理解の外であり,さらにそれをサプリメントとやら言うカプセルに頼ろうという素人療法が信じられません。自分を大切にしようという気持ちを忘れているようです。
 人は生きるために食べます。身体の仕組みは食べて出すように作られています。太るというのは食べ過ぎだからです。簡単な理屈です。そんなに大食いをしているわけではないのに太ると言い訳が出てきます。量の問題ではありません。身体が求めるものを,求める量だけ,食べていればいいのです。
 食べたいと思うものは身体が求めているものでしょう? そこに誤解があります。食べたいと思うものとは頭が求めているものです。舌に美味しい,味の良さに酔いしれたいという嗜好に過ぎません。身体が求めているものとは,ひもじいという食欲に現れます。ひもじいから食べる,それが食べることです。美味しさに引きずられると,それは際限のない頭の欲望ですから,身体とは無関係になります。頭が自分の身の程を弁えていればいいのですが,そうでなければ,過食になります。
 肥満は贅沢病と言われるのは,ひもじさによる食欲から,美味しさによる嗜好性に変異するからです。舌が肥えた,それが食通の自慢でしょうが,そのときに身の程を弁えられなくなるのです。生きるという素直な欲を殺してしまうのです。身体機能は摂取されたものを本来の機能に従って蓄えようとします。それが適量であるかどうかはチェックしません。入食量のチェックは済んでいるはずですから。
 薬によるスリム化を図ろうとすることは,正常な身体機能を無理にゆがめようとすることです。動いている機械に棒を突っ込むようなもの,あるいは栄養の入れ物に穴を開けるようなものです。壊れて当然です。壊れなかったら,薬としては効いていないことになります。
 食欲は生きるために働いてこそ正常です。舌を楽しませるために食べるようになったら,それは食欲ではありません。腹となんの相談もしていないからです。肥満の原因は味覚の肥満です。

(2002年07月28日号:No.122)