《有難い 心が通う 仲があり》

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 イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルは,アジアで布教活動をしているときに挫折の連続で精神的に参っていました。そんな中,マレーシアのマラッカで出会ったのが日本人のヤジローでした。ヤジローはもともとは薩摩の人間で、日本で何らかの罪を犯して東南アジアに逃亡した人物だったと伝えられていますが,根は誠実な人物だったようです。ザビエルはヤジローのその実直な人柄を認めることから,日本に興味を持ったと伝えられています。
 ヤジローはザビエルを陰から支え,二人の仲は緊密になっていきました。やがてザビエルはヤジローとともに1549年に鹿児島に上陸し,領主である島津貴久に布教活動の許可を得ました。ヤジローはザビエルの勧めで洗礼を受けて,日本人第一号のキリスト教信者になっています。もし,ザビエルがヤジローに出会っていなかったら、キリスト教の伝来はもっと後の時代になっていたかもしれません。
 異境の地という緊張の場で生きていく日々,心に満たされない空白を感じている二人が出会い,出自の違いを越えて人間としての交流ができる不思議さを感じたのでしょう。ザビエルは日本人とも素直に向き合うことができるという確信を得たはずです。情が響き合うことは,人の心を開いてつながりを深めることに前向きになる効果があります。
 見渡せば直ぐ側に多数の人がいる中であっても,誰も私のことを分かってくれない,そういう断情の思いが人を後ろ向きに追い詰めます。今現在の世の判断指標はディジタルの時代であり,人との関係までも0と1で考えると,無と有では大きな違いです。分かってくれる人が不在0と,1人は存在するとでは,全く状況が違います。居てくれる,その存在の確信が貴重であり,寄り添いという支えがもたらす意味です。
 仲の字は人と人の中を素直に意味しています。大事なことは中に何があるかということです。互いに相手の存在を大切に受け止めているのか,利用しようとしているのか,それぞれの思いの意味づけによって,関係の様相は異なってきます。仲良しは心が通いあう,そういう中の状態なのです。心は自分だけのものではなく,人とつながることで満たされるものということを忘れないことです。

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(2023年11月19日:No.1234)