《有難い お付き合いの輪 つながって》

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 アメリカの東インド艦隊司令長官ペリーが,黒船4隻を率いて浦賀に現れたのは,1853年6月3日でした。そのとき,浦賀の奉行所には英語を話せる人が居なかったので,与力の中島三郎助は,オランダ語通訳の堀達之助を連れて船に乗り,黒船に近づいていきました。
 旗艦サスクエハナに近づくと,中島与力は甲板上の人影に「私は,オランダ語を話すことができる」と英語で呼びかけました。彼が話せた英語はこれだけでした。幕府はそれまで英語の通訳を全く養成していませんでした。
 一方で,アメリカ側は事前にそのような日本側の事情もしっかりと把握していて,オランダ語の他,中国語を話す通訳まで連れてきていました。そこで,オランダ語を話すアルセ・ボートコンと中島がオランダ語で話して,ペリーの来日の意図を理解したのです。中島がオランダ語でした最初の質問は「貴艦は,何国の船で,なんのわけがあって,やってきたのか?」だったそうです。
 国際的な出会いでは,言葉の違いを通訳する手続きが必要になります。人はお互いに分かり合うことによって繋がっていくからです。初対面では問いかけて答えて,それぞれの理解が深まっていきます。問答無用は分かり合いを拒むことになって,諍いの状態に陥ります。共存するためには話し合い,お互いを受け入れる状態を築いていきます。
 全く同じ言葉の出会いでも,分かり合おうという気配りがないと,つながることができません。人の繋がりに不具合が生じたときは,お互いのそれぞれに通じる役が間を取り持って理解を図るようにすれば,修復が可能になります。二人では犬猿の仲ですが,桃太郎という第三者として通役の参入があると,チームになることができるのです。桃太郎の仲介,それはきび団子をそれぞれに与えて,犬猿の間に入り込むことなのです。子はかすがいという古い形も,人をつなぐ通役の存在を実感した経験知なのです。
 二人の人間関係が社会関係になるためには,余人が絡むことが必要です。いわゆる第三者を巻き込むことで,トリオになることです。二人の間で絡み合う欲望が整理され薄められる効果が働くようになるからです。利害の衝突がウィンウィンの結合に,いわゆる三方一両得という状況に変わります。社会関係とは誰もがそれなりに望むような状況を生み出すことができるものなのです。人が生きていく形として機能するからこそ,社会生活が築き上げられてきました。

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(2023年11月26日:No.1235)