《信頼の 純度を上げる ミスチェック》

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 物作りの世界では,どのように作るかという技術が本筋です。ところでIC製作の現場では各製作段階はもちろん出荷直前でのチェックという工程が目立たないのですが大事です。複雑な機能を組み込んだICが正常に動いているかどうかは,簡単には分からないので,大がかりな検査機器になります。
 小さな計算機が日常の暮らしの場でごく普通に使われていますが,本当に正しい計算をしてくれているのか,おそらくほとんどの人が確かめていないはずです。計算機のチェックをするという発想は普段は持っていません。そこには絶大な信頼があるからです。使う方は信頼すれば済みます。しかし,その計算機を作っている方は,その信頼に応えるためには膨大なチェックを重ねているのです。
 最近食品業界で信頼を損なう事例が頻発しています。利益追求という圧力に負けて,これくらいは構わないだろうという緩みが見えます。信頼とはとても厳しいもので,99%の信頼では用をなしません。信頼とは限りなく100%でなければならないのです。取引の信用も同じレベルです。
 100回に1回ぐらいと高をくくっていると根こそぎひっくり返されます。たった一度のミスで全てがご破算になります。そんな悲劇を避けるためには,どうすればいいのでしょうか? それは何重にもチェックをすることです。ミスが絶対あってはならない,それを実現する手だてはミスを外部まで漏らさないきめ細かなチェックシステムの整備です。
 手作業の職人技では,玄人である条件はいかにミスをごまかせるかという力量です。小さなミスを含んでいても,できあがったモノの機能に支障がなければ,それで信用はくずれません。しかし,精密なモノや,大きな組織活動のように,人の思慮をはるかに越えたケースでは,責任を引き受ける守備範囲の狭い職人技は通用しません。人はもちろんのこと,システム自体がミスを発見し修復する機能を備えていなくてはならないのです。
 個人が細心の注意を払っても,集団になれば必ずほころびが生じます。9割の仕事が2人重なると8割になります。3人で7割,人数が増えるほど,不完全さが掛け合わされていきます。国際化,情報化という流れによって人々の結びつきが広範になるにつれて,個人が担うべき信頼の純度に対する要求は格段に増していきます。見ず知らずの人とつながっていることをいい加減に考えいい加減な仕事をしていたら,世間から寄ってたかって抹殺されます。自分に厳しく,それは自分へのチェック指向の要請と受け止めておいた方がいいのです。

(2002年09月01日号:No.127)