《つながりを 無理に辿れば けりつかず》

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 たまたまテレビを眺めていたら,野球解説をしている加藤さんが巨人軍の松井選手の打撃フォームの変化について説明をしていました。バットを振るタイミングの話でしたが,面白いことを言っていました。タイミングを取るときには,普通1,2,3とカウントをします。ところが,実際にやってみると,1,2,の〜3になります。「の〜」という一拍が入るというのです。
 言われてみれば,確かにそうです。重いものを数人で持ち上げるときなど,かけ声を掛け合いますが,12の3と言っています。この1拍には気付きませんでしたが,タイミングの取り方でズレを感じていることがあります。それはジャンケンです。「ジャンケンポン。最初はグー」とはじめます。小さい頃はジャンケンポンではじめていたのですが,いつの間にか「最初はグー」が挟まって定着しています。どうもやりにくいと感じています。
 小学校の給食の時間に,こんなしつけをしている学校があります。「5,4,3,2,いただきます」,「1,2,3,4,ごちそうさま」。数字の部分は頭の中で数えていて,言葉だけを声にするのだそうです。気持ちをリズムに乗せて引き出そうというアイデアです。
 ジャンケン,食事の挨拶は,数えてみると5拍が入っているようです。1,2,の〜3の「の〜」は実は2拍分に伸ばされていると考えると,5拍が身体のリズムに合っているのかもしれません。
 俳句や川柳の音の数は5,7,5ですが,5という調子が感覚的に馴染んでいることを思えば,5拍というのは何となく納得することができます。そういえば数の基本である指も5本です。5感とか,5臓とか,5色とか言いますが,古くは陰陽5行説という考え方がありました。
 五穀豊穣の五穀とは,米,麦,粟,豆,稗。五色そばとは,赤,黄,青,黒,白。五人囃子とは,謡手,笛,小鼓,大鼓,太鼓。五輪マークとは,青,黄,黒,緑,赤の輪。など・・・。
 関連した行事として,七五三のお祝いがあります。髪置という3歳の子どもが髪を伸ばす儀式,袴着という5歳の男の子がはじめて袴をはく儀式,帯解という7歳の女の子がはじめて大人の帯を締める儀式です。徳川三代将軍家光の三男徳松(後の5代将軍綱吉)が病弱だったことから,5歳のお祝いを慶安3年(1650年)の11月15日に行ってから,11月15日が定着したそうです。
 バッティングのタイミングの話が,連想を辿ってとんでもないところに行き着きました。きりがありませんので,この辺で打ち切りにさせていただきますが,たまには,自由にあれこれと頭の散歩をするのも楽しいですよ。ただし,キーワードになる方向指示語は持参してください。

(2002年11月17日号:No.138)