家庭の窓
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お店に入ってレジの前に立つと,「カードをお持ちですか?」と尋ねられます。カードによる支払いではなくて,ポイントカードという意味です。ポイントが溜まることで,何らかの形でキャッシュバック的なお返しができるというサービスです。
たまにしか利用しないお店ではカード作成を申し出ることもしないので,「いいえありません」としか答えられません。また「ポイントカードを作りませんか」という誘いに乗っても,折角のカードを携帯していないので,再訪問しても役に立ちません。どうにも勿体ないことです。
朝食のために購入している食パンには,メーカーのサービスであるポイントシールが添付されています。レジを通った傍にある袋詰めのカウンターの上には,そのシールを貼っていく用紙が置かれています。貯まると景品と交換できます。連れ合いは折角だからと貯めているようです。
頼まれて買い物に行き,いつもの食パンを買ってきました。ところが,連れ合いがアッと声を挙げたのです。袋に付いているはずのポイントシールが無かったのです。誰かがポイントシールだけ剥がして持っていったもののようです。それを確かめなかった迂闊さを責められる羽目になりました。そんな不届き者がいるなんて思いもしませんので,確かめることもしませんでした。
日々の暮らしにはこんなせこい出来事が結構あるのでしょう。小さな万引きが罷り通り,被害者は仕方がないと見逃すこともあります。ポイントを差し上げましょうというサービスはお客の側で受けるかどうかの決定をすることができます。ところが,横取りされると,決定権という権利を不当に侵されたような嫌な気分になります。わずかのポイントを失ったことよりも,暮らしの場の信頼関係を汚されたことの方が悔しいのです。
細かなことをいえば,横取りできるようなサービスを提供することで,出来心を誘う方にも責任があるという論理も可能です。でもそれは屁理屈です。信頼を前提にしてはいけないという見方はねじ曲がっているからです。バカ正直では生きてはいけないという本音も残存していますが,やはり正直者がバカを見る世間であっては悲しくなります。
話は飛びますが,イラクに取材に入っていた取材記者が,廃墟となった宮殿から黄金の小物を持ち出したという報道がありました。まさに火事場泥棒そのものです。壊されたモノは所有権が無くなっているから,拾っても構わないという勝手な解釈をしたのでしょう。そのままにして置いても,どうせ誰かが持っていくだろうと考えたのかもしれませんが,理由にはなりません。
記者とは陰の存在です。陰だから,場所柄などお構いなしに割り込んでもお目こぼしされます。その場とはどんな関係も持たない,いてもいなくても何の支障もない存在です。それがモノを持ち出すという直接の関係を顕わにすれば,侵入者に格下げされます。信頼を損なうのです。自分がなぜ信頼されているのかという自分の立場を弁えることは,自分を大切にする条件です。信頼されているという重みを大事にしたいものです。
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