《何気なく 見過ごしている 知恵もある》

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 講演会や総会などのような催事では,舞台のある大部屋や講堂を使用します。その際に客席から向かって左右に特別な席を設ける場合があります。主催者席と来賓席です。講演の講師としてお招きを受けるとき,演台に向かって左側に控えの席があることが多いようです。主催者は右側に陣取ります。
 舞台では,客席から見て左側が下手で,右側が上手です。NHKののど自慢の番組では,アナウンサーは下手から登場し,ゲストは右側の上手に陣取っています。結婚式や入学・卒業式,シンポジウムや音楽会,いろんな催事に出席すると,主催する側が下手に位置しているのが普通のようです。
 ところが,主催者が上手になっている場合もあります。出入り口が上手側にある場合です。そこでは,入り口に近い方に主催者の席が取られています。用件をこなすのに都合がよいからでしょう。また奥まった位置が上座という気配りのせいかもしれません。
 役者が登場する花道は,下手につながっています。これはどちらでもいいというわけにいかなかったようです。下手になる必然性がありました。芝居が始まった当初は,今でいえば時代劇です。当然お侍が出てきて,クライマックスは大立ち回りです。舞台中央に立っている主人公が,花道から登場する悪役を迎える段取りになります。刀の柄に手をかけて,見得を切る場面が必要です。そのときの立ち姿を想像してみてください。
 主人公は右側から迫ってくる悪役を迎える体勢です。このとき左腰に差した刀が客席の方を向きます。主人公の構えがよく見えます。もし花道が逆に上手につながっていると,主人公は客席に背中を見せることになり,見栄えが失われます。花道はやはり下手でなければならないのです。幕引きで主人公が退場するときも,下手の方が様になります。
 来賓を舞台にお迎えするとき,下手から入っていただくと悪役扱いになるかもしれません。上手に来賓席がある場合が多いのは,たまたまかもしれませんが理にかなっているようです。いまどきは,そんなことなどどうでもいいのかもしれません。しかしながら,だからといってどちらでもいいといういい加減さは,感心しません。何かにこだわる姿勢を失うことに慣れると,品格という曖昧なものがなし崩しになりかねません。
 訳がよく分からないから無くしてしまっていいということで,たくさんのものごとを葬ってきました。分からないということを自分の方に引き寄せる謙虚さを見失わないようにしたいものです。
《読者の方のご注意で,上手と下手を取り違えていたことが判明しました。
 平成5年1月8日に修正いたしました。お詫びいたします。》

(2003年05月18日号:No.164)