《経験を 生かして使う リニューアル》

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 政治や経済から暮らしの場まで,さまざまな組織があります。人は共同して生きているからです。その組織形態の要素の一部として,人事があります。役職の人的な階層構造です。一般的に年長者がトップに置かれます。それは経験という知恵に対する期待があるからです。
 あるトップの立場にいる高齢の方とお話しする機会がありました。いろんな役職を兼ねておられ,自信に満ちたお話振りでした。聞き役にまわっていると,いわゆる持論というのを披瀝してくださいます。現状を憂える内容であり,問題点を指摘されます。伺いながら,申し訳なかったのですが,使い古しの内容だと感じました。
 「昔は」,「自分の若い頃は」という立場から今現在を批判されます。人の生き方には普遍性がありますが,暮らしぶりは時代の変化を受けます。それを無視したら,意味がなくなります。昔のやり方が廃れたことに原因を押しつけるのは,すでに思考の停止状態です。経験の豊かさとは経験をそのまま再現することではありません。経験を生かさなければなりません。生かすというのは,今の時代環境に合わせるという作業を必要とします。
 自分の経験として持っている形は,あくまでも自分が生きていた時代に相応しいものでしかありません。時代が変われば,その時代に即した形に変わりますし,変えなければなりません。そのことを知らないままに,トップとしての役割を果たしてもらっては困るのです。今更そんな旧い時代の形を持ち出されても,どうしようもないというのがメンバーの正直な思いでしょう。そこでメンバーは組織を守るために,トップを飾り棚に置くようになります。旧いものに蓋をするのです。
 経験を素材として,脚色する,新しい味付けをする,時代の装いを施すといった手続きが不可欠です。トップの力量とは,何よりも今現在から将来を見る目です。その作業として過去から現在までの変化をきちんと把握する考察がされなければなりません。過去から現在までこう変わってきたということが見えるから,これからはこう変わっていくだろうという洞察ができるのです。
 経験を生かすということと,経験をなぞることとは全く違います。旧いパソコンを持ち出してきても,今の状況ではかえって邪魔にしかなりません。もちろん,人間の生き方と機械とは違っていますが,時代の流れにマッチするかどうかという状況は共通なものです。時代に取り残されるという思考の停止は,年輩者が最も注意しておくべきことです。

(2003年06月29日号:No.170)