《いずこかで 出会った方と 探る汗》

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 道を歩いているときや人が参集する場所に出かけると,出会う相手から挨拶や会釈を受けることがあります。久しぶりに会う方の場合,どこのどなたか存じませんがという間ができてしまいます。どこかでお会いしたことがあるとは思い出せても,どのような方面の方か引っかかって出てきません。
 「お久しぶりですね。お元気でしたか?」といった当たり障りのない会話で時間を稼ぎながら,相手の話を引き出そうと「今はどうされていますか?」と水を向けます。場所柄などからどの関係筋かを掴めれば,それなりの立ち話程度はできるのですが,完全に特定できないと落ち着かないものです。
 ところが,先を越されて逆に質問されるとあわてます。何を答えていいのか分からないからです。曖昧に要領を得ないことになります。急いでいる風を装って雲隠れせざるを得ません。全く不明ということは滅多にありませんが,それでも名前が思い出せない方は結構います。
 代表的な立場にいたり講演などの出会いをしていると,こちらは知らないのに向こうの方はよくご存じというケースもかなりの頻度で起こるようになります。そういう場合は責任領域の外ですから,最初から諦めてはいますが,そんな間接的関係であるかどうかは最初から分かりようがないので,ちゃんと告げていただくまでは気が休まらない立場に追い込まれます。それにしても,自分が知っている人には自分も知られていると思いこんでおられる人が多いです。
 車で渋滞の中を走っているときです。右折待ちをしていると,直進車が停まって譲ってくれます。アリガトウと会釈して右折しながら周囲を見ると,直進方向が詰まっていたりとか信号が赤に変わっているということがあります。直進車は停まらざるを得なかったと分かると,会釈して損したかもと思うことがあります。確かにワザワザ会釈しなくてもよかったかもしれませんが,しておけば間違いないかと思い直すことにしています。
 向こうから相前後して二人の方がやってきます。行き交うとき後ろの方と面識があり,「おはようございます」と声を掛けます。ところが手前にいた見ず知らずの方が怪訝な顔をして「おはようございます」と返事をするようなしないような応対をされます。こちらも不意を食らって,改めて挨拶をしたり,後ろの方は挨拶を返しそびれてバツの悪そうなたたずまいです。前の方をやり過ごして,改めて顔を見合わせて黙って頭を下げ合うことになります。
 人が出会い集まるとき,顔見知りの人しか見えていないようです。見ず知らずの人は顔をつきあわせても,人と思っていないのかもしれません。もちろん人間ではないと思うはずもありませんが。

(2003年09月28日号:No.183)