家庭の窓
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連れ合いが家庭の医学という分厚い本を取り出しています。どこか具合でも悪いのかと思い,何を見ているのかと問うと,ヘルペスを調べているという返事です。その言葉を聞く機会があったのですが,いまいち腑に落ちないというか,はっきり言えば分からなかったのです。なんとなく分かったような宙ぶらりんなままでは,落ち着かないものです。
あまりに分厚くて部位別に説明されている本なので,連れ合いは探しあぐねています。手近にある国語辞典を見ると,「皮膚に群れをなしてできる,小さな膿を持った水泡」とあります。疱疹です。平たくいえば,ブツブツができるということで,そんなことかと腑に落ちます。症状を現す言葉です。ヘルペスというカタカナ語を使うから,分からなくなります。専門用語としてはそれなりの定義付けがあるはずですが,納得するための最初のステップは,下世話な言葉で入る方が楽です。
何のことを言っているの? 何が何か分からない状況です。くどくどした説明を聞かされたときに,一言でいえばどういうことかと尋ねたくなります。先ずは大づかみをしないと理解が始まらないからです。例えば,カメラの望遠や双眼鏡を使うとき,まず低倍率で目標を捉えて徐々に高倍率に移行していきます。いきなり高倍率にしておくと,目標をつかまえることは難しくなり彷徨うばかりです。
言葉によるコミュニケーションでは,先に聞いた言葉が理解できないと,後の話がどこに向かっているのか見えなくなります。特にカタカナ語は要注意です。漢字を思い描くことができるときは字面からなんとなく理解はできますが,カタカナ語は連想不能です。最近の歌い手さんたちの名前も曲者です。男女の区別,個人かグループかの区別が全くつきません。そのためどんな歌を歌っているのかという結びつけのしようがありません。入り口で迷子になっています。
逆のこともあります。耳慣れた言葉を手前勝手に受け止めてしまう場合です。オレオレ詐欺はその典型です。オレオレという言葉を大事な身内の言葉と決めつけてしまう所から,筋書きが妙な方に流されていきます。夫婦の間でも,バカだなあと言われて,どうせバカですよと切り返してしまいます。人付き合いでも,よかれと思って言い出したことが,相手には非難に聞こえてしまう場合もあります。言葉を聞き取ったり伝えたりするというのは,難しいものです。
どうすればいいのでしょうか? 聞き違いをしているかも,言い足りないかも,そんな謙虚さを持ちながら,さらには確認をすることしかありません。早とちりや聞きそびれを防ぐように,後できちんと調べておくことです。そのフォローができていれば,間違いに落ちかかっていても踏みとどまることができます。
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