《おみなの世 こんなはずでは 泣くおきな》

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 万葉の昔,「おつ」という言葉がありました。「変若」(一字です)と表記され,復とも書かれていました。復元されて若返る,再生するという意味です。人間については,子どもを産める,子どもをつくる機能があるということを表そうとして,「おとこ,おとめ」という言葉ができました。「おと」は「おつ」を語源としています。再生する,つまり生殖能力のある人間がオトコでありオトメであったのです。したがって,オトメは処女ではありませんでした。
 やがて年を取ると共に人は生殖能力を失います。オトコではなくなると「おきな」,オトメではなくなると「おみな」と呼ばれるようになります。この「おみな」が訛って「おんな」になりました。おんなとは,生理のあがったおばあさんというわけだったのです。ところで最近の報道を見聞していると,男女関係がちょっとチグハグになっているような気がします。セクハラの内容がピントはずれではないかと感じています。
 社会的な人望を獲得している一人前の男性が,少女のスカートの中に関心が向いてしまっていたり,少年とのいかがわしい関係に耽っています。成熟したオトコとしてのピントが外れています。一方で,女性タレントが子どもを産んだら離婚という風潮も感じられます。こちらはオトコを求めているようで,先祖帰りをしています。豊かな暮らしは突然変異を定着させる作用があるのかもしれません。最も滅多にない事例だから話題になるということがあるにしても,一方でその報道が拍車を掛ける副作用を引き起こしています。
 「おみな」世代の元気の良さはどういうことでしょう? 好奇心旺盛でそこかしこに出かける意欲と好奇心が満ちあふれています。様々なイベントがあれば,そこに溢れているのはおみなたちです。生殖能力を失って一層元気になるというのは,動物的生命ではなくて,怪しげなもののけ姫のようです。それに引き替え,おきなの姿はなんということでしょう。江戸時代の噂通りに精気を吸い取られて腎虚の病に冒されているようです。
 豊かな世を作り上げるために身を粉にして勤め上げた挙げ句,美味しいところを妻子に持って行かれ,気がつけば浦島太郎となりはてています。それが望みであったとはいえ,多少の分け前ぐらいは残しておいてくれても罰は当たるまいにと愚痴を肴にくだを巻くしかないようです。オトコって辛いものですね。しようがないなと妻子の笑顔を眺めながら,疲れた人生を自ら慰めるのでしょう。今度生まれてくるときは絶対!?

(2004年05月02日号:No.214)