家庭の窓
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最近人を殺める事件が頻発しています。自動車運転免許取得のための資金が欲しいという理由から一人暮らし高齢者への凶行,腹いせまがいに幼子への虐待の果ての凶行,贅沢目的の保険金詐欺を目論んだ夫殺しなど,別のやり方があったはずなのにと思われることばかりです。自分の欲望にあっさりと負けて,しかもその実現に最低の手段しか考えつかない愚行です。我が身可愛さなのでしょうが,社会の仕組みに対する無知はとても危険だという事例です。
若い方に人の気持ちを思いやる意志力が弱くなっています。年配の方は「人様に迷惑を掛けることを恥」としています。今様の世間では,すっかり消滅しています。この古い暮らしの心情は,三段構えの歯止めになっています。まず他人に様と敬称を付けて接し,迷惑という行為判定の基準を意識し,さらに自分に対する恥という忌避観を持ち合わせています。人と自分の両方を確実に見て関係性を弁えています。古い価値観として捨ててしまうのは,あまりにも短絡的で性急すぎたのです。
情報社会の進展は,人の付き合いを拡散します。ネット社会では不特定多数という得体の知れない他者との付き合いが紛れ込みます。オレオレ詐欺などは典型です。人との付き合いが希薄になるという副作用が顕在化します。見ず知らずの相手に対して,思惑など斟酌することはできません。一見の相手ですから仕方がありませんし,馴染みの相手に付随している信頼は期待できません。もしもそれを期待するなら,無謀というものです。人を見たら泥棒と思えという故事を持ち出さざるを得ません。
人様の迷惑などどうでもいいという社会が出現しているのかもしれません。その反動として,人から受ける些細な迷惑に対してはキレルほどの大仰な反発をし責め立てます。その延長線上で,自らを正当化する稚拙な論理を拡大適用するようになります。欲望に直結した自己実現?を手段を選ばずに遂行して何が悪いという開き直りをします。邪魔する社会が悪いという逆恨みも,躊躇する歯止めもなくて暴走します。その末路としてわけの分からない事件が噴出してきます。
世間の陰は,見なくて済むなら,それが一番です。しかし,闇が表に浸みだしてくると,否応なく目に入ります。目を背けてばかりもいられません。楽しく明るく生きるためには,闇を見極める目も必要です。安全や安心はのんきに構えているだけでは不確かです。幾分かの警戒心を発揮して,油断しないようにすることが大切になります。君子危うきに近寄らずの言葉を想起しながら,人の心の裏表を弁えることです。闇は人の隙をついてくるものです。目張りを怠らないように気をつけましょう。
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