《常識を 破って作る 新天地》

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 NHKの番組プロジェクトXで,横浜ベイブリッジの架橋に挑んだ方々が取り上げられていました。戦後の荒廃で横浜に横たわる川が橋を失って,物流の滞りが発展を拒んでいると思い立ってから完成まで,ほぼ半生を掛けた人がおられます。予算獲得のための折衝,橋の設計と施工など,数多くの人が関わっています。湾の底が60mのヘドロであり,土台の建設に対して潜水面での技術的壁が現れ,斜陽化していた九州の炭坑で使われていた掘削機が改良されました。高い橋脚の立ち上げには鉄のブロックを積み上げるしかなく,その溶接技術は不況に陥っていたタンカー造船の溶接技術が採用されました。
 それぞれの専門分野には優れた技術があり,それを他分野につないだとき,より一層の優秀さが生まれてきます。優れた技術は領域を選ばないのです。何事かをなしていく人は,思いも寄らない分野の技術をつなぐという発想を持っています。専門に拘ると小さくまとまっていきます。異業種の連携や融合という,まとめつなぐという思考が技術の進展をもたらします。狭い専門領域では不可能に近いことでも,他領域には既に確立されつつある技術があるものです。もちろん,その際には条件が異なるために技術の改良が不可欠ですが,やるという意志に支えられた知恵がきちんと導いてくれます。
 人は今までやったことがないという未体験なことには,二の足を踏むものです。しかしながら,自信のあることから踏み出せばいいという見切りができれば,やれるかもしれないという楽しみが芽生えます。必ずしもとんでもない挑戦ではなくなります。その見切りができるかできないか,その洞察力が大事です。仕事一途に生きてきた人が,自分の仕事の領域からはみ出すのを躊躇したとき,気持ちの老いが始まります。周辺の分野に手を出し続けていけば,いつも若い気持ちで生きることができます。リタイアして何もすることがなくなると急に萎えてしまうのは,自分の生きる範囲を固定しているからです。
 たとえわけの分からない分野に飛び込んだにしても,そこには自分の能力を生かせる部分が必ずあります。そこはこうすればもっとうまくいくのに,という気付きがあるはずです。これまでに自分の身につけてきた力が,そのことを発見させてくれます。組織活動をするときには,異業種の人を巻き込んだ方が強力になる,1+1が2ではなく3以上になるというのは,異能の集まりになるからです。逆にいえば,同じ専門家が束になっても,それはただの足し算に過ぎないということです。専門的な常識という共通基盤があるために,異なった発想が入り込めないからです。
 そんなことを勝手に思いながら,全く門外漢としてあちこちに首をつっこんでいる非礼を自己弁護しています。

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(2004年12月05日号:No.245)