《知らないと 小さなことでも 後悔に》

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 アスベストという一般にはあまり聞き慣れていない物質が注目を集めています。中皮腫という病気の元凶です。石綿のことですが,蛇紋岩などの繊維状の鉱物を綿のようにもみほぐしたものです。熱に強いので,主に保温用や耐火材料に用いられます。
 大学院の学生のころ,研究のための半導体材料を作成するために高温炉を使っていましたが,研究費が少ないので炉を手作りしていました。その炉の保温のために石綿を使用していました。水に濡らして柔らかくした板状の石綿を炉心管を中心にぐるぐる巻きにします。もちろん手作業ですので,アスベストにまみれます。部屋にはそんな炉がゴロゴロしていました。今から考えると,とても不健康な環境だったようです。
 健康に対する危惧にさして注意を払っていなかったのは,知らなかったからです。知らないことは怖さ知らずになります。当時は皆が知らなかった,そういう状況であるなら,仕方のないことと諦めなければなりません。一部の専門家は知っていたかもしれません。警鐘を鳴らしていたかもしれません。それが広く世間に伝わらなかったということもあり得ます。人の知恵は基本的には後知恵であるとすれば,結果が現れてはじめて事実として認知される定めです。
 情報化の世の中です。人のお話の中で「既にご案内のように」とか,「既にご存知のように」というフレーズを重ねて語られることがあります。案外と知らないことがあります。話す人は当たり前と思っていても,聞く側の人は知らないことがあります。新聞を読んでいない人,テレビを見ない人,本を読まない人,情報源が限られている人,いろんな選択がある中で,情報は万遍なく知れ渡っているということではないようです。
 四文字熟語を若い人だけではなく年配の人も知らないという趣旨のテレビ番組がありました。知らないからどうということはないでしょう。知らなくても日々の暮らしにはそれほどの支障はありません。わずかに人間関係において損をしていることがあるかもしれませんが,その程度のことで痛みは感じません。日々にはわずかであっても,数年数十年と積もっていくと,大きな差が出てくるはずです。
 知らないと,アスベスト被害のように数十年後に大きな被害になります。知っているはずのことを知らないと,得られたはずのチャンスを失い,幸運を取りこぼすことになることでしょう。そんなことも知らないの!と呆れられたら確実に損をしていきます。そんなことを知っているんだ!と驚かれたらきっといい話につながっていくはずです。人の付き合いは何を知っているかでつながっていきます。ものを知らない人とは誰も付き合いたくはありません。
 物知りを勧めているのではありません。大事なことをちゃんと知っているということです。何が大事か,それは付き合っている相手に拠ります。よい仲間を持つことが大事なのは,その関係の中で必要なものごとが決まるからです。素敵な仲間を選ぶことが,大事なことを適確に教えてくれます。もちろん,いろんな情報の道をつないでおく努力も日頃の心掛けとして欠かすことはできないでしょう。

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(2005年11月06日号:No.293)