《楽しみは 言葉と言葉 掛け合わせ》

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 売り言葉に買い言葉。言葉を売り買いするという発想は,考えてみると面白いものです。売りと買いが揃うと,交渉は成立します。話しかけた言葉をきちんと受け止めたということになります。激しい言葉を投げかけられると,激しく反発してしまいます。穏やかに話されると,和やかに通じ合うことができます。言葉の応酬における作法のようなものです。
 会議に出席する機会が多いのですが,楽しい会議とそうでもない会議があります。楽しい会議とは,言葉が言葉を呼び込んでくるようなものです。話が転がっていき,内容が深化,拡張化していき,そうかという新しい発想に至ります。独りで考えているときより,話していると別の視点が絡んできて,思いもしない展開に発展します。会議の醍醐味ですが,そのことが三人寄れば文殊の知恵という故事の意味なのでしょう。
 あみだくじを引くときに,それぞれ選んだ後に,公平性を増すために横線を一本追加することがあります。その一本で結果は変わってきます。同じように,会議の流れに一つの言葉が差し挟まれることで,その後に変化が生み出されます。もちろん,その結果が良いか悪いかは,状況に応じて決まります。余計な一言でぶち壊しという場合もあり得ます。そうなりそうなときは,もう一つの言葉で多少なりとも修正をする必要があります。それは会議の司会者の口にかかっています。
 ああ言えばこう言うという具合に,話し合いがもつれることもあります。一歩進んで一歩戻るという手練手管です。意図的に話の腰を折るというディベートの一つですが,論理の展開に潜む弱点を探りたい場合にはそれなりに有効です。逆に封じることができれば,話はより緻密さを持つようになります。
 言葉が言葉を連れて来るという機能は,連想と呼ばれます。書いているときにもかなり強く機能します。文章を書いているとき,行き詰まることがあります。何気なく数行を読み返してみると,その勢いが次の言葉につながっていきます。立ち止まってぼんやりと考えるより,有効です。一気に書き上げるという場合は,言葉の動きに力がこもっているときです。
 このコラムを書いているとき,最後までを予め想定しているわけではありません。最初の言葉につられて連想が進むのに任せています。どんな展開になるのか,自分でも分からないのですが,そのことを楽しんで書いています。

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(2006年02月05日号:No.306)