家庭の窓
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伊東四郎氏が2代目尾上松録から「アマチュアとは楽しむもの,プロとは苦しむもの」というアドバイスを受けたそうです。NHKテレビで放映されていました。大切なお金を頂くプロは,それだけの値打ちを持つ異空間の時間を創造する責任があります。自分を楽しませることより,観客を楽しませることが優先されます。楽しんでいただくというおもてなしの心は,神経を張り詰めていながら,それを感じさせないように隠しておくさりげなさが求められます。
現役を退いて非常勤の特別職という身分になると,アマチュアの気分になります。もちろん公式に委嘱されるわけですから,セミプロというか元プロのような扱いで,それなりの責任のある立場ではあります。特に会長という役職であれば,職名による公式の文書も発生しますし,相応の公的な予算も使うので,いい加減に職務を遂行することはできません。それでも,非常勤であるという束縛の緩さが,アマチュアのように職務を楽しむ余裕をもたらしてくれます。本音の所では,安い報酬ではそれに見合った職責を果たせばいいのではという気の緩みが漂います。
もっとお金をかけてプロに依頼すればもっと良い成果が出るはずなのに,非常勤の人の仕事ではこの程度が関の山でしょう。そう思われるようであれば,辞めた方がいいと考えています。何らかの仕事を依頼されたなら,それに向かって最大限の力を注ぐ,自分自身がいい加減にしたと思わないところまで,やり遂げておきたいのです。プロにも引けを取らない,あるいは並みのプロには負けない仕事をするプライドは持っているつもりです。
ところで,その仕事の評価ですが,世界によって様変わりすることに気をつけなければなりません。現在関わっている,あるいは委嘱される仕事は専門世界のものではありません。つまり,プロとしての仕事を押し通すと,世界が違うので通用しなくなります。つまり,アマチュア世界にプロの仕事を単純に持ち込んでも不適合になります。非常勤の特別職として専門家としてプロが入ることがありますが,プロらしい仕事によるプロの成果を出されると,何か筋が違うという評価になりがちです。
回りくどくなりましたが,プロらしい仕事をしても,成果はアマチュア世界に適合させておくという工夫が必要になります。背景や構成などの基礎固めはしっかりとした上で,いわゆる平易な形式で分かりやすく整えるという仕上げが肝心です。その辺のコツを掴むのが,プロ中のプロということになるのかもしれません。その面では終いがけに仕事を楽しむという境地に入った方が肩の力が抜けていいのかもしれません。ただし,アマの世界を侮るような考えで気を抜いたりすれば,虻蜂取らずになるリスクもあることは忘れてはなりません。
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