《楽しみは トゲを見つけて 薬とし》

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 NHKのプロフェッショナルという番組に,たまご型ゲームを生んだ横井昭裕氏が登場していました。企画についての話の中で,「企画の命はトゲ」というコメントが出ていました。今流行っているメジャーな傾向を8割のベースとして,マイナーではあるがトゲになるものを2割追加すればいいものになるのだそうです。新しくなければ企画ではないのですが,根底から新規なものは受け入れられないのでしょう。流行に乗って柳の下の2匹目のドジョウを求める追随では企画にはなりません。
 トゲとはどういうものでしょうか? 「アレ!」という関心の引っかかりを産み出すものです。二つの形が想定されます。一つは今までに誰も思いつかなかったことです。新しいものです。他の分野には既にあるものでも,はじめて自分の領域に持ち込んでくれば,それも新しいものになります。異業種からのアイデアの取り込みです。
 もう一つは,企画の対象が持っている原点を際立たせることです。成熟した対象では往々にして精緻になり過ぎて,本来の目的が希薄になっています。例えば,横井氏が語っていたように,タマゴッチの例では,死ぬというトゲが織り込まれています。ゲームに死ぬという不吉なものを入れるのは如何なものか,という反論に対して,育てるということは死なさないことであるという原点が貫かれています。
 企画や計画などがたくさんありますが,そこには全体を束ねるコンセプトが不可欠です。コンセプトの核に原点が据えられているはずです。トゲが装飾として付加される程度のものであれば,それは不快なトゲでしかないでしょう。魅惑的なトゲとは,原点からはみ出してくるものでなければなりません。そのトゲが心の琴線に触れることによって,企画全体が受け入れられるようになります。
 企画という狭い領域に限らず,とても小さいがきらりと輝くトゲはいろんな局面で必要になります。人間関係ではそれは個性になります。普通にはトゲのある人は敬して遠ざけたくなりますが,そのトゲは欲につながる見かけ倒しのものだからです。もっともトゲとして表立って見せているので,隠されているよりましかもしれません。
 横道から戻りますが,付き合っていてドキッとする驚きを醸し出す人がいます。会うごとに新鮮な印象を与えてくれる人です。何が大事なことかを見失わずに,目先の流されていくあれこれの中でも,しっかりとした芯を感じさせます。言動は人となりに現れるといわれますが,人を見るということは楽しい学びになります。

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(2006年12月10日号:No.350)