《宿題は! 子どもじゃないの あなたです》

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 アエイウオ。連れ合いが母音の発声練習をしています。日本語の音は子音と母音から成り立っています。どうして父音と母音ではないのでしょうか。言葉は母国語と言って,父国語とは言いません。母なる大地であって,父なる天空とはあまり聞きません。チチも出ない父になぜチチがあるのでしょうか?
 胎児ははじめの段階ではすべて女性として大きくなっていて,途中から男性に変化するそうです。はじめ女性ですから父にもチチが残ったということです。男性は女性からの分家的な存在だったのです。本家に頭が上がらないのは当然でしょうか。
 家庭での母子密着からはみ出した父は,家から外に逃れ,別に社会というものを作り,そこで男に優位な仕組みを勝手に築いていきました。政治界や経済界,学会や宗教界,遊びの世界で鬱憤晴らしをしてきたのです。男性が生来背負ったトラウマなのかもしれません。その男性御用達の社会にご本家の女性が参入してきました。男性がバカな戦争をしでかして社会を留守にしたために,女性が肩代わりを果たしたことが発端でした。
 男の子3人と女の子2人を足したら何人でしょう。3+2=5の計算はできるのに,この足し算ができない子どもがいます。男と女は足せないというわけです。足せなくて正解なのです。足し算は同じ種類のものでしか成り立ちません。車3台と電話2台は足せませんよね。男性社会には女性は足せないと考えてきたのが,これまでの根強い社会観でした。
 算数は新しい見方を教えてくれます。男女を足した答の5人は男女が消えています。男も女も同じ人間ですから,人間の足し算として計算しています。それが男女共同参画の基本です。男女を違和感無く足し算することができるなら,それほど困難はないはずです。
 この足し算ができなかった男性は苦労するはずです。家庭での生活雑事や子育てといったお荷物と思っていた責任ある役割を分かつという宿題が課せられているからです。「宿題は済んだの?」とママに言われないように,「今からしようと思っていたのに」の言い訳はもう通用しませんから。
 西暦1000年の頃は平安時代です。トゲの目立つ漢字世界の男性社会に対して,まるやかな仮名世界の女性社会が勃興した時代です。西暦2000年の今,平成という年号の平安との類似が意味深長な思いを抱かせてくれます。どのような対抗社会が現れるか,はたまた新社会が止揚するか,ご本家のお手並み拝見を新世紀への楽しみといたしましょう。それでは,年末恒例の大掃除の始まり,はじまり。

(2000年12月24日号:No.38)