《ブランドで 装うあなたは 何隠す?》

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 連れ合いが着替えをしているとき,目の前に背中を向けてすっと立ちます。洋服の背中のボタンかファスナーが止めてほしいと待っています。小さなものなので苦労します。どうして女性の服はもっと大きな留め具にしないのだろうと思います。実用よりおしゃれが優先するのでしょう。もっとも男の手に合わせていたらおかしいのかもしれません。因みに,おしゃれとしゃれこうべとは同じしゃれ(さらされるの意)だとご存じでしたでしょうか?
 かつてシンデレラコンプレックスという言葉が流行りました。シンデレラが王子に見初められたのは,煌びやかな宮殿での舞踏会でした。もし貧しい市井の一角にひっそりと暮らしている身なりのよくないシンデレラであったら,王子の目には留まらなかったでしょう。人の魅力は出会った場所に左右されます。恋人時代はクリスマスをホテルで過ごす華やかさでお互いが魅力的に見えてしまいます。恋の手練手管です。目出度く結婚してごく普通の生活になると,メッキが剥げたような失望を味わうかもしれません。夢から覚めたことに耐えられなくなったら,破局です。場所の目くらましを割り引く落ち着きを示すのが大人なのでしょう。
 鳥や虫で彩り豊かな姿をしているのは雄です。鳴くのも雄です。雌は聞こえれば用が足せますのでことさら鳴くこともなくおとなしくしていてもいいのです。基本的なコミュニケーションは両方から発信する必要はありません。連れ合いにもう少し身なりに構ったら言われながら,着飾るのは片方でいいのだと思い定めています。
 華やかな着物姿の娘さんは言い寄る男に対して袖を振ることで返事をしていました。振られたというのは拒否の振り方をされたことから言われるようになりました。結婚したら意思表示をする必要はないので,袖を短くした留め袖になります。不要なコミュニケーションは止めなければなりません。おしゃれに無縁なことへの秘かな言い訳です。
 未だに連れ合いのおしゃれの意図が読めずに考え込んでいます。清潔で寒暖を緩和してくれたらそれだけで十分な衣生活を抜け出せません。衣装を脱いだら裸の王様と嘲られるのではなく,裸でも王様になりたいと願っています。おしゃれとはうちからにじみ出るものがあってこそ,その補助としての機能が発揮できるものでしょう。おしゃれとは,自分をさらすことです。腹周りを隠すことではないのですが・・・。

(2000年12月31日号:No.39)