家庭の窓
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窓外の田んぼには緑の稲がびっしりと生え,穂が色づいてきました。猫の鳴き声が聞こえてきます。田んぼの中に入り,出口が見えずに迷っているようです。猫になったつもりで想像してみると,どちらを見ても稲の壁です。歩いても歩いても同じ風景の中で,自分のいる場所が判断できません。途方に暮れていることでしょう。そこで舌打ちの音を継続して聞かせてみました。こっちに出ておいでというつもりでしたが,猫は警戒しているのか逆の方向に動いていきました。鳴き声のするところを追ってみると,どうやら向こう側の外に出て行ったようです。一つの固定した音源を起点にして,とにかく進む方向を決めてくれたのでしょう。
動物は見聞きする環境の情報に反応して行動します。生きていく上で最も大事なことです。その情報が読み取り不能になると,行動できません。何をどうしていいか分からないと立ち往生するしかありません。パニックに陥ります。
組織のトップが裸の王様になっていると,適切な判断ができません。遙か彼方から入ってくるマスコミの情報にばかり頼っていると,判断を誤ります。生の情報,自分の五感で捉えた情報でなければ,情報を読み解く鍵穴がずれてしまうからです。マスコミの情報は伝聞になります。加工済みですので,生の味は消されています。最近の傾向として,社長という方々が現場の実情,消費者の期待という最も大事な情報を把握していないことによる失態が見られます。信頼に応えるという役割を果たすには何が必要かを肝に銘じて欲しいものです。
連れ合いがそれと意識しないで発しているメッセージ,子どもが行動に込めているメッセージを細心の感度で聞き取らなければなりません。そのためには,同じ場所で同じ時間を過ごさなければなりません。最も良いのは,同じことをすることです。暮らしのあれこれを協働する,それは分業という形ではなく,同じことを二人でするということです。おはようというあいさつを交わすこともその一歩です。どのような気持ちが込められているか,声をきちんと聞き取れば,確実に伝わってきます。
仕事や暮らしのそれぞれの場で,大切な人からの情報をきちんと見聞することは,意識していないとつい疎かになります。面白い情報,耳当たりの良い情報を選ぼうとする弱さを持っているからです。例えば,うわさ話への強い興味やテレビの世界の視聴率は,視聴者が喜ぶ情報の目安になっているということに気をつけなければなりません。楽しくない情報も,楽しむようになれたらいいなと思います。猫のように迷わないために。
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