《楽しみは 歩いていけば 気が変わる》

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 気候が寒い周期に入ってくると,クマさんは冬眠のリズムがムズムズとしてきます。一番最初に現れるのが,起床しづらくなることです。とはいえ,目覚めたらさっと寝床を離れる習性があるので,グズグズと迷っている暇はありません。ただ,洗面所に向かうまでの十数歩の間,重いまぶたを感じながら,起きたくないなという自分の声を聞いています。日に日に冷たくなってきた水道の水で顔や口を洗っているうちに,すっきりとお目覚めをします。
 続きがあります。仕事に向けて家を出るときです。朝食を済ませ,ニュース番組を見ながら着替えです。出発の時が迫ってきます。戸締まりを確認し,玄関に向かう歩みの間に出かけるのが億劫だなという思いを味わっています。必要な所作をしているうちに,ドアの外に立っているので,鍵を閉めます。駐車場までの数歩を歩むうちに,態勢はすっかりお出かけモードに入ります。発車。そこから先は家のことなど念頭からすっかり消えて,安全運転に集中。完全に外の人になっていきます。
 小人閑居して不善を為す。高校時代に習った一文を思い出します。至らない人間は暇を持て余してじっとしているとよくないことをするものという,至極簡単な一文ですが,動かずにじっとしているといろんな自分の声が聞こえてきて,それに捕らわれてしまうもののようです。朝の時間,流れに身を置いて,身体を動かしているから,怠け心に捕らわれずに逃れられているということでしょう。
 さあ,いくぞ。そんな気合いを自分に掛けて,怠け,甘えや不安を吹っ切ることもあります。気合いの強さは,負の気持ちの強さに比例します。弱い犬ほどよく吠えるというのも,案外に同じ類のことなのかもしれません。そのような対処を外見に表すかどうかは別にして,気持ちの整理をするためのバランス行為が必要です。身体を動かすことによってプラスの気持ちを誘起することができます。自分に正直にという言葉が流布していますが,行動を伴った自分の声を信じた方がよいようです。
 今のうちはいいのですが,次第に寒さ厳しい折へと進んでいきます。朝の試練は負荷を増やしていくことでしょう。より冷たい水の洗礼を浴びる必要が出てきます。先行きは明るくはありませんが,追い詰められていく季節をやり過ごすことを通して,懸命に生きている自分を感じる機会が得られます。そう考えて,やせ我慢を楽しむことにしましょう。

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(2007年11月11日号:No.398)