《よろこびは 議論に負けて 妻を立て》

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 テレビの中でコメントをされている女性の方が,自分の意見を述べた後でウンウンという様子でうなずいています。自分で言って自分で納得しているようで,ちょっと気になりました。そういえば,周りにいる女性の方々が同じような話し方をしています。言いたかったことがきちんと言えたことを自己確認しているのでしょうか? 女性の直感的な思考形式を勘案すると,口にしたことの次の言葉を準備できたという確認なのかもしれません。そう思ってしまうのは,女性の話を受け取るタイミングを外すと,次から次によどみなく話が続くという事態に遭遇する経験があるからです。
 話がよどみなく続くことを「立て板に水」と言いますが,女性の話は「あみだくじ」に似てジグザグに進むように見えます。基本的には縦に流れていくのですが,途中でスッと横に走るシフトが入ります。結果的に話の最後は全く違った所に行き着きます。おしゃべりを楽しむというときは面白い展開になりますが,ある決まった議題に沿った話し合いをしているようなときには,協議の帰結として妥当な結論につなぐことができない場合もあり,聞いただけということになりかねません。
 思いつくままに話す癖のある方は,かなりの意見を言ったつもりなのに結論には生かされなかったということで,話し合いに参加した達成感がなくなります。聞いてもらえる話し方をしていないせいで,決して周りから無視されているというわけではありません。発言の後の頷きが流れに沿った意見発表ができたというものであれば,よい結論に向かうための参加ができるはずです。
 連れあいと話していると,この頃は要領をつかんでいるので,話のシフトにかなりの程度はついていけているのですが,時折聞き返すこともあります。敵も然る者ということで,丁々発止を楽しんでいます。他愛のない話の時はいいのですが,真面目な議論のような場合には,元に戻そうとするとかなりの抵抗があります。どうも敵さんにとっては,シフトにもそれなりの筋が通っているということのようです。その連想ができないこちらは,半分諦め状態になります。勝手にしろ!?
 左右の脳を縦横に使っている女性には,男性はおしゃべりでは太刀打ちできません。二刀流を使う武藏の強さです。ツバメ返しは通用しません。色男小次郎は知恵が足りないようです。それで平和が保てるのなら,夫婦円満のために,議論はほどほどにしておこうと決めています。負け惜しみをよろこべる歳になりました。

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(2008年02月17日号:No.412)