《よろこびは 夫婦相和し 安らぎを》

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 車中でNHKラジオを聞いていると,ホッとするところというテーマで視聴者からの意見も絡んでの語りが進んでいました。女性アナウンサーは布団の中と答えていましたが,男性アナウンサーは家という答えでした。そうだなという思いで聞き流していましたが,何か気になって,反芻していました。運転中なので,思考回路は中途半端でしたが,焦点が合ってきました。
 見えてきたのは,男性と女性の違い,女性が家ではなく布団と限定したことです。言い換えると,女性にとって家はホッとするところではないということです。家事や育児から解放されて布団の中に入ったときにホッとする,そういう姿を想像できました。男性は家の中でのんびりしている,家のことは自分のことではないと思っていることに思い当たったのです。
 男性は仕事モードと自分モードしかありませんが,女性にはさらに奥さん・母親モードが追加されています。家の中で男性は自分モードに入ろうとしますが,女性は奥さんモードで迎え,母親モードの悩みも交えながら,暮らしのあれこれを語りかけてきます。話がすれ違い,気持ちがすれ違っていきます。その結果として,女性が自分モードに入れるのは,布団の中ということになります。
 少子化や人間関係の衰退といった世情の揺れは,家に対する男女の思い入れの違いが震源になっているような気がしています。かつての家庭は夫唱婦随という形でそれなりの和を維持していました。夫唱婦随は差別的であるという理由で破棄されましたが,夫唱婦唱と両方が勝手に言いっぱなしという形では和は成り立ちません。ましてや夫休婦忙では,共に暮らすという形が家庭から消え去り,結果として信頼関係の種のようなものが心の中で発芽できなくなっています。
 家というまとまりを意識して持とうとしなければ,人とのつながりは底の浅いものでしかなくなります。家庭のぬくもりを体験し,実際に持っていなければ,人のぬくもりを信じることは難しいことでしょう。人の好意を素直に受け入れる余裕がなくなり,人の思惑ばかりを気にすることにもなります。心安らかに生きていく場所がなくなっていくことでしょう。そのような悪循環から抜け出すための第一歩は,連れ合いが家でホッとできるという家庭を持つことです。
 ホッとするという状態は,自然に転がっているものではありません。誰かがわざわざ作り出してくれているものです。その誰かにお互いがなることを願うという考え方が可能です。ホッとする場所を協力して作り出すから,家族であり夫婦であることになります。お互いがホッとするように気働きをし,お互いがホッとすることを喜ぶ,そういう家庭を作りたいものです。

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(2008年05月18日号:No.425)