《しあわせは 拾った言葉 恩送り》

 
Welcome to Bear's Home-Page
ホームページに戻ります

家庭の窓にリンクします! 家庭の窓

 午前の講義を終えて帰路の車中で,NHKラジオを聞いているとき,ひとつの言葉に引っかかりました。恩送り。普通は恩返しと言いますが,返すのではなく送るということです。助けていただいたら,その恩をお返しするのが普通ですが,別の方を助けることで,いただいた恩を送っていくという意味だそうです。恩を順送りすることで,人のつながりが網の目のように広がっていきます。
 恩を返したいけど返すことができないことはよくあることです。そのようなときに,その恩を別の方にお渡しすればいいということはかねてより思っていたことですが,そのことを表す言葉を持ち合わせていませんでした。恩送りという言葉をはじめて知りました。誰が言い始めたのか,昔からある言葉なのか分かりませんでしたが,良い拾い物をしました。
 帰宅して,インターネットで検索すると,江戸時代からある言葉ということが紹介されていました。難解な言葉ではないのですが,出会うことがなかったのは,現在ではあまり使われていないということでしょう。言葉は使われないと枯れていきます。代わりとなる言葉が生み出されていけばいいのでしょうが,人との余計なつながりを縮少しようという流れに沿って,身近な暮らしの中で恩を施すことがない現状では望むべくもありません。確かに,ボランティア活動という新しい助け合いが生まれていますが,なんとなく組織的な活動というイメージに包まれて,個人的・日常的な活動にまで浸透できていません。恩送りというものとは違ったものと考えられます。
 内閣府が平成21年10月に行った男女共同参画社会に関する意識調査の中に,「結婚しても必ずしも子どもをもつ必要はないか」という設問があります。調査の概要からその部分を転載しておきます。

*************************《引用》*************************

 結婚しても必ずしも子どもをもつ必要はないか聞いたところ,「賛成」とする者の割合が42.8%(「賛成」22.5%+「どちらかといえば賛成」20.3%),「反対」とする者の割合が52.9%(「どちらかといえば反対」30.1%+「反対」22.8%)となっている。
 前回の調査結果と比較してみると,「賛成」(36.8%→42.8%)とする者の割合が上昇し,「反対」(59.4%→52.9%)とする者の割合が低下している。
 都市規模別に見ると,「賛成」とする者の割合は大都市で,「反対」とする者の割合は小都市,町村で,それぞれ高くなっている。
 性別に見ると,「賛成」とする者の割合は女性で,「反対」とする者の割合は男性で,それぞれ高くなっている。
 年齢別に見ると,「賛成」とする者の割合は20歳代から40歳代で,「反対」とする者の割合は60歳代,70歳以上で,それぞれ高くなっている。
 性・年齢別に見ると,「賛成」とする者の割合は女性の20歳代から40歳代,男性の20歳代,30歳代で,「反対」とする者の割合は女性の70歳以上,男性の60歳代,70歳以上で,それぞれ高くなっている。
 就業の状態別に見ると,「賛成」とする者の割合は雇用者で,「反対」とする者の割合は家族従業者,その他の無職で,それぞれ高くなっている。

*************************《引用》*************************

 必ずしも子どもを持つ必要はないと考えている割合が43%です。この数字が多いとみるか少ないと感じるかはお任せするとして,やはりという思いです。少子化という傾向が現れている源流はこのことにあるという感想です。自分が生きていく上で,子どもを産み育てることの意味を考えていないのでしょうか。親から命という恩を受け取って,恩送りとして子どもを育てる,その順送りが途切れようとしています。産み育ててもらったことを感謝する気持ちはあるのでしょうが,その感謝をどう生かしていくか,恩送りという言葉を大事にしていきたいものです。

ご意見・ご感想はこちらへ

(2010年01月31日号:No.514)