《しあわせは 言葉の隙間 埋め合わせ》

 
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 地元の小学校の学校評議員をしています。学校評議員というのは,地域に開かれた学校を目指し,校長が地域につながる人と相談できるようにという目的で設けられた制度です。学校の行事に招かれて,地域の目線で学校を考えることなどが期待されています。卒業式に招待を受けて,出席してきました。
 来賓に対する事前の式進行の案内の中で,仰げば尊しの歌を6年生が歌うので,3番をご一緒に歌ってくださいといわれました。式進行上,全曲ではなく3番だけ歌うのだろうと思っていました。いざ本番,その場面がやってきて,6年生女子によるピアノ伴奏が始まりました。来賓も立ち上がり歌い出そうとしたところ,6年生は1番から歌い始めました。3番を歌うつもりだったのですが,はぐらかされた感じになりました。そこで合点したのです。途中から参加してほしいということであったのです。自分の浅はかな勘違いが氷解しました。
 途中から歌に参加するという経験がなかったために,全く思いも及ばない勘違いになりました。大きな声で3番の歌詞を歌い出さなくてよかったという反省が残りましたが,一つ新しい経験をしたことになります。事前の説明を勘違いしたのは,6年生が歌うのはどこかという理解を勘違いしたことです。来賓は3番を歌うということは明確であったのですが,6年生も3番を歌うものと思ってしまったことです。後で考えれば,皆で3番だけを歌うというのは少しばかり不自然と思わなければならなかったのかもしれません。
 この勘違いをしたのは一人ではなかったということは,普通に起こりうることであると思われます。小さなコミュニケーションギャップが生じたということです。説明の中に,「6年生は1番から歌いますが」という1句があれば避けられたギャップです。説明をする場合,自分の側のことは十分承知しているので,説明の言葉の中に空白があっても,自分の中ではつながっているので,それを空白とは感じません。自分の側の状況を明確に言葉として伝えることに気配りをする必要があります。伝えても伝わっていないことがあるということを思い,念を押すということです。
 相手に対して伝えることに重きを置くと,こちらのことを伝えることが疎かになります。共同行動は,双方が相手方の動きを理解していなければ成り立ちません。こちらはこうするので,そちらはこうしてください,という形が基本になります。伝えようとするのではなく,伝わるようにすることです。
 もちろん,伝えられたことの中に不明な点,相手がどうするのかが分からなかった場合,確認をすればいいのです。その確認をせずに,勝手に思い込んでしまったことも迂闊です。伝わらなかったら,伝わるようにお互いに確認し合うことが大事です。話す方だけではなく,聞く方も伝わったかと自問自答する手続きが必要になります。コミュニケーションはお互い様なのですから。

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(2010年03月28日号:No.522)