《しあわせは 優しさを問う 子を前に》

 
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 小学生の交通安全のボランティア活動をしています。校区内のあちこちで見守りをしている方々を招いて,2年生がお礼の会をしてくれました。簡単なジャンケンゲームから始まり,合唱を聴かせてくれて,代表の子どもがお礼の作文を朗読,全員の作文を参加したボランティアの人数で分けてとじ合わせた冊子を頂きました。その後,子どもたちからの質問があり,それに応える形で,ボランティアが一人ひとり,子どもたちに話をする機会を与えられました。授業時間内の行事ですので,1時間弱の会でした。校長先生のお話の後,子どもたち一人ひとりと握手をして,終わりました。
 子どもたちの質問は,「どうして雨の日も風の日も見守りを続けられるのですか?」,「どうしてそんなに優しくなれるのですか?」といったものでした。よそのおじさんやおばさんが,どうして自分たちのために見守りをしてくれるのか,不思議に思われるのでしょう。子どもたちにとって,周りにいる大人は何の関わりもない存在という感じであったにもかかわらず,当番でもなく,お金になるわけでもないのに,見守ってくれる大人がいることが珍しいのかもしれません。子どもの世界も,人のことなどほおっておきなさいという世間のクールな雰囲気に飲み込まれているようです。
 一方で,ボランティアの姿に見守りを続ける意欲や優しさを見つけて,子どもたちは関心を向けてきます。しなければならない役割や責任による行動以外に,自分の意志でする行動があることに気付いてくれました。しかし,自分たちにとっては全く無縁なおじさんやおばさんたちが,自分たちのために優しくしてくれる理由が見つけられません。優しさがいいものと感じて,それを持ちたいと思う気持ちが芽生えています。優しくしてくれてありがとうと思うところで終わるのではなく,自分も優しさを持つことができたらと思うから,どうしてという質問が出てきます。
 お礼の会の発言は席順で,端に座っていたので最初に回って来ました。子どもたちの質問にも答えてもらうようにという先生のコメントが前置きされて,マイクが渡されました。ここ数ヶ月事情があって見守りができていない理由と謝罪を述べた後,見守られているだけではなく,自分で自分を見守ることを覚えて欲しいという願いを話しました。最後に,ボランティアの気持ちを伝えました。一言で言えば「みんなが大好きだから優しくできる」という理由です。嫌いな人には優しくなれないけど,好きな人には優しくすることができるでしょう,おじさんやおばさんたちはみんなのことが好きなんだよ,それだけを話しました。
 子どもは,だったら,どうすればみんなを好きになれるの?という疑問を持つはずです。ゆったりとした時間があれば,少しずつ解き明かしていくことができるのですが,深入りはできませんでした。深入りしすぎると,2年生の子どもには分からないところにたどり着くこともあります。人を好きになるという自分の問題,優しさという行為表現の裏にある自分の気持ちに気付いてもらえれば,ワンステップを進むことができるでしょう。
 人との間合いは滑らかなときばかりではありません。多少ざらつくこともあります。その部分にとらわれると,人が鬱陶しくなります。もっと大きな感性,鋭敏すぎない感性,修復が可能な感性を持つようにすれば,楽になるはずです。ベタベタした関係だけが人との間合いではありません。間合いの距離の千変万化も大切な要素になります。子どもにはまだ無理なことですが,少なくとも,いろんな人との付き合いをし,いろんな人がいるという観察をしっかりとしてもらえれば,分かるときが必ずやってきます。ボランティアへのお礼の会は,その一つの機会になったのではと喜んでいます。

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(2010年07月04日号:No.536)