《捜し物 ここにいるよの 声ほしい》

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 10年ぶりに家中の片づけをしました。小さな倉庫の中は眠り続けた古い台所用品,古い書類,古い書籍に占領されていましたが,大部分を廃棄しました。空いた空間には,押入から古くないものが流れ込んでしまい,当分休眠することでしょう。
 ところで,座敷を占領していた父の形見として持ち込んでいたタンスなどを別の部屋に移しましたが,そのあおりを受けて若いときに揃えて30年以上使っていた粗末なタンスが放逐されました。座敷から入れ物が減って部屋としては格好がついたのですが,小物を入れておく場所が消えてしまいました。
 いつまでも広げていると連れ合いのきつい一瞥に見舞われますので,とりあえず本棚の隅や,空き缶,紙袋に入れてあちらこちらに分散させて見てくれを整えました。お陰で何かをする度に,何処に収納したか探し回る羽目に陥っています。まるで引っ越し直後の混乱状態です。ホッチキスの針を探すのに全部を開けて回ります。さっさとことが運ぶようになるにはしばらく時間がかかりそうです。
 新年度に新しい職場に入った方がいらっしゃるでしょう。職場に慣れるにはまず一日,次が一週間,一月間と過ごし,最終的には一年間という繰り返しのワンサイクルを経験することが必要です。人間関係や物品配置などの多重な地図を自ら踏破して完成する期間です。
 特に人間関係はかなりのウエイトを占めるはずです。装置や物品は使用者の思惑に従順ですが,人はこちらの思惑とは違う思惑をぶつけてきます。職場を離れざるを得なくなる理由の一番は,対人関係です。そのために,例えば上司との関係では,「ホウレンソウ」という言葉が取り上げられることがあります。ホウ=報告,レン=連絡,ソウ=相談,ということです。
 戸棚の扉は取っ手を掴めば開くことができますが,人の扉は取っ手がついていませんので,呪文を唱えて相手から開いてくれるのを待たなければなりません。その呪文は人によって違います。ホウレンソウによって個々に読み取るひつようがあります。その気配りができるかどうかが,人付き合いの鍵になります。もしも,「こうすべきである」とか,「こうしてくれてもいいはず」という期待を相手に押しつけていたら,人の扉はあるとき突然にバタンと閉ざされてしまうでしょう。
 住むべき環境を整えるためには,正確な情報地図を作り,使い方に馴染もうとする気持ちのゆとりが望まれるようです。

(2001年04月22日号:No.55)