《しあわせは 凸凹あって 絡み合い》

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 噛み合う。歯車がカチッと噛み合えば,滑らかに回転が伝わっていきます。滑る。ギャグが場に馴染まないと滑ります。議論が噛み合わずに,会議が滑ることがあります。良かれという思いやりが噛み合わないと,善意は滑ります。試験の問題に対して,噛み合わないような解答をして,単位が滑ります。
 つながりを期待するなら,噛み合いが必須の条件です。噛み合いは隣接する歯車の状態を表し,凹凸の繰り返しです。凹は相手の凸に合わせる必要があります。自分の言いたいことだけではなく,相手の言い分をキチッと受け止める姿勢です。今いろんな所で,凸凸だけの歯車が回っているような感じを受けています。凹がないので噛み合うことなく,滑りまくっています。
 自転車のペダルの回転を駆動のためのチェーンに伝えるギアが多段変速になっています。伝達効率を変えるために,直径の異なる歯車がセットになっていますが,噛み合わせは同じです。相手が変わっても,噛み合わせのパターンを変えなければ,幾重にもつながることが可能です。人の付き合いも,相手の見かけは変わろうと,常に同じように真摯な応対をしておけば,滑ることはありません。
 噛む。上歯と下歯を接触させることです。噛み合わせが悪いとぎくしゃくします。接触が不完全で隙間ができるからです。滑ることはないのですが,ガタピシと不快な音を発することになります。人との関係でも,お互いの間に気持ちの隙間があると,イライラした雑念が紛れ込み,触れ合いが微妙にずれてしまいます。上歯と下歯がかすかにずれて擦れ合うとき,ハサミと同じように噛み切るという機能が生まれます。かすかな気持ちのずれがあるときに,そのまま不用意に擦り合わせてしまうと,断絶という事態に至ることもあります。
 磨かれた床面を歩くと,滑りそうになります。靴底が噛み合えないからです。滑り止めには,小さな凸凹であるざらつきが必要です。もしも気持ちをまるやかに磨き上げると,周りの人は噛み合えずに,するりと素通りします。水清ければ魚住まず。逆に非常に個性的であれば凸凹のサイズが大きすぎて,噛み合わないことにもなります。
 ものの滑りを良くするために,ワックスがけをします。流動性の物質で表面の凸凹を埋め合わせると,噛み合わせが除去されて,滑らかになります。つかみ所がなくなります。つかむという所作は,固定することであり,噛み合うことです。手でつかむとき,摩擦が起こらなければなりません。摩擦がないと滑ることになりつかむことができません。摩擦はざらついているものがこすれ合うときに大きくなります。
 あらゆるモノやコトがつながり固定されるためには,凸凹の噛み合わせが働いています。社会も同じです。人がそれぞれの凸凹を噛み合わせるから,つながっていられます。自分はどのような凸凹であるのか,いろんな人との出会いから見えてくるでしょう。自分のことは自分では見えにくいものですから。

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(2010年10月17日号:No.551)