家庭の窓
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年が明けてから,ぐずついた天気が続いています。張り切った気勢がくじかれて,雨や曇り模様の空を見上げていると,目の前を何かがサアッと通り過ぎます。
隣地の田んぼには稲の切り株から再び伸びた稲穂が実っています。それを目当てにスズメの群れが飛び交っています。我が家の屋根からわっと田んぼに舞い降りては舞上がるという飛翔を繰り返しています。一気に降りて米を食べればいいのにと思いますが,近くで猫がうろついている場所なので,スズメなりに警戒をしているのでしょう。住宅地に取り残されたような一面の田んぼの米を食べ尽くすまで,毎年この光景が繰り返されます。
28歳で亡くなった初唐の詩人劉希夷(りゅうきい)の「代悲白頭翁(白頭を悲しむ翁に代わる(抄))」という詩があります。
古人無復洛城東 (古人また洛城の東に無く)
今人還対落花風 (今人また対す落花の風)
年年歳歳花相似 (年年歳歳花相似たり)
歳歳年年人不同 (歳歳年年人同じからず)
寄言全盛紅顔子 (言を寄す全盛の紅顔子)
應憐半死白頭翁 (應に憐れむべし半死の白頭翁)
此翁白頭真可憐 (此翁白頭真に憐れむべし)
伊昔紅顔美少年 (伊れ昔紅顔の美少年)
昔、洛陽の東の郊外で梅を見ていた人々の姿は今はもう無く,
それに代わって今の人たちが花を吹き散らす風に吹かれている。
来る年も来る年も、花は変わらぬ姿で咲くが,
それを見ている人間は、年ごとに移り変わる。
お聞きなさい,今を盛りのお若い方々。
よぼよぼの白髪の老人の姿,実に憐れむべきものだ。
この老人の白髪頭,まったく憐れむべきものだ。
だがこの老人も昔はあなた方と同じく紅顔の美少年だったのだよ。
同じ風景だと思ってみている自分は,年々歳々,歳を積み重ねて変わっていきます。意識は歳を取らないようです。だから,体の衰えを受け入れがたくなるのでしょう。動きが鈍くなってくることが腹立たしく,何とか回復しようとじたばたします。老いるということを憐れと思うのは,若い人が抱く感覚です。年相応に心身ともに過ごすようにすれば,人生のあらゆる時をもっと楽に生きることができるでしょう。
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