家庭の窓
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3月11日に起きた東日本大震災以後,「被災金庫の22億円返還」という明るいニュースがありました。中野寛成国家公安委員長は記者会見で,被災地で拾得物として警察に届けられた金庫は7月10日時点で約5700個。中から回収された現金が約23億7000万に上ったことを明らかにしました。現金の最高額は,石巻市の事業者のもので,9900万円が入っていたそうです。現金以外に貴金属や金の延べ棒などが入っているケースもありました。
津波によって流された会社や一般家庭で使われていた金庫が,行方不明者を捜索する3県の被災地警察,自衛隊,市民などによって発見,回収されました。岩手,宮城,福島の3県警では約96%にあたる22億7000万円を持ち主に返還しました。
遺失物法では,届出から3か月が経過すると所有権が,拾った人に移ります。保管場所に事欠くことから警察庁は,3県警に金庫を開けることを許可しました。業者に委託してドリルなどで開けた結果,ほとんどの金庫に預金通帳,有価証券,不動産の権利証などが入っていたため,所有者の特定につながりました。津波の泥水が入り込み,現金や書類の洗浄,乾燥に苦労したということです。
届けられた財布やバッグの現金と合わせると約37億900万円。その内,85パーセントにあたる約31億円が持ち主に戻りました。
津波で建物が破壊されたことに伴い多くの貴重品が流されましたが,その中で警察に拾得物として届けられた現金が多いことに外国メディアが驚いています。漂流した金庫が,所有者に戻るということは,世界的に見ても非常にまれだということです。
イギリスの新聞「デイリーメール」では「日本人の誠実さが証明された」と驚いています。同紙の電子版によると,「地震や津波の猛威を見せつけられた後に日本人は驚くべき誠実さを見せた」,「警察署に保管するスペースが無くなるほどの金庫が警察に届けられた」,「日本では多額の現金を自宅やオフィスに保管することはよくあることで,沿岸地区では水産業者が取引に現金を使うことを好む」,「金庫は鍵穴が泥でつまっていたが,警察が委託した業者が解錠した」とあります。「震災後に盗まれた金庫もあるだろうが,23億円の現金が持ち主に戻ったという事実は,日本人の中にある高い倫理意識を示すものだ」と締めくくっています。
「デイリーメール」のコメント欄には,「震災後に略奪や暴力がなかった。礼儀正しくちゃんとしていた。素晴らしい国」,「日本に住む外国人が財布を無くしたが,中の物が元の状態で戻ってきた」「これが中国だったら違う話になっていただろう」と続いています。
自分の身に置き換えてみて,誰も見ていないところで金庫を見つけたら,どうするだろう? やはり,警察に届けるでしょう。誰も見ていないからと猫ばばしても,天網恢々疎にして漏らさず,の言葉があるように,いずればれます。何より,自分自身を誤魔化すことになるので,自ら罪を着ることになるのはごめんです。真っ当に生きることがなによりであると思っています。
人の難儀につけ込むといった卑怯な振る舞いをしたくはありません。心静かであることが一番です。金庫の返還という振る舞いは,倫理意識という大層なものによるものではないのではと思っています。
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