家庭の窓
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学習到達度調査(PASA)を実施した経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長が,2007年に来日した際に,次のようなことを述べたそうです。
「知識を記憶して再現することしか学んでいない生徒は,将来の労働市場で通用しないだろう」。では,どういうことを学べばいいのでしょう?
ある実践があります。「やり方」を教える前に試行錯誤をさせて、工夫して考える態度を身につけさせた生徒が学力が高くなっているというものです。試行錯誤というプロセスは,現在の立地点を確認し,そこから伸びる可能性のある道筋を探し出して,少し進んでみて,望ましい方向に向かっているかどうかを見極める力を鍛えます。さまざまな道を経験しながら,今の課題に相応しい道を選択して解決に至ります。
ところで,試行錯誤となった無駄に歩んだ道は,他の課題に対して相応しい道となる可能性を残します。それが創造につながる道かもしれません。やり方を習ってしまうというのは,解決につながる道しか歩まないので,違った道の存在すら気付かないままです。試行錯誤の経験は,似たようなことをしたことがあるという誘導をもたらしてくれます。応用する力を発揮させてくれます。
創造は新しい道を見つけることであり,道案内ができることです。試行錯誤の段階ではその道の選択が正しいかどうかを直感的に判定しているでしょうが,正しい選択であることが確信となるためには,他者に対して説明できる論証という処理が不可欠です。他者を納得させる論証が構築できたら,共通の知的財産になります。
仮定から結論に至る論理を組み上げる力,それは人が物事を成す上で不可欠な力です。物事を弁える,訳が分かる,納得して行う,そのような社会力の基本は,論理を扱う力に依拠しています。考える力も,言い換えると論理を組み上げる力です。仮定と結論という二つの事実を連結する道・関係性を見つけ出す,つなぐ力とも言えるでしょう。
論理は言葉をつなぐ力です。国語風にいえば,文章力です。単語で思考は不可能です。単語は直感的であり,論理は複数の単語の連結になります。文章表現で言葉を操る習慣がなければ,論理力は鍛えられません。国語力の大事さに,もっと着目すべきです。
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