《手を抜けば 余計なものが 積み上がる》

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 塵も積もれば山となる。意味は,どんなに少しのものでも,積もり積もれば山のようになるということです。出典は,竜樹著と伝えられる大品般若経(摩訶般若波羅蜜経)の注釈書である,鳩摩羅什訳「大智度論」巻94にある「此の業の果報を受くれば,則ち度を得べきこと難し。譬えば微塵を積みて山と成さば,移動するを得べきこと難きが如し」が由来となっています。『江戸いろはかるた』の一つです。英語では, Many a little makes a mickle(少量のものが多く集まれば多量になる),Light gains make heavy purses(僅かな収益が重い財布を作る),Every little helps(どんなに少ないものでも役に立つ)が相当します。
 小学生の頃,学校でこども郵便貯金が奨励されたときに聞き覚えた言葉です。お小遣い程度のわずかなお金でも,毎月コツコツと預けると,やがて驚くほどに貯まると言われていましたが,子どもの時間感覚は今という時間しかないので,何の実感もありませんでした。喩えであるとは分かっていましたが,塵が積もってできた山は特にありがたいものではないのにと思ったものです。
 家の中を見渡すと,生きてきた長い間に積もり積もった雑品が空間を占拠しています。家に持ち込んだ当初は有用であったのですが,一定の用を果たし終えて,次の出番を待つ態勢に入ると,そのままに凍結されていきます。断捨離という手法があると目にしたこともありますが,持ち物仕分けをしたなら,かなりのものが削除という札付きになりそうです。そろそろ身辺整理をした方がよいかなと思いながら,そのうちと先延ばしにして,上っ面に降り積もる埃をぬぐう掃除だけに終わっています。
 最も積もっているのは,本です。読書家の家にあるようなミニ図書館的な書庫は用意していないので,書棚の各棚には前後2列に並んで,本の上部にある隙間にも詰め込んで,あふれているので,段ボールに詰め込んで,倉庫や押し入れに積み込んでいます。さらには,委嘱を受けている委員関連の書類ファイルが一年で1m幅程になり,格納場所がなくて,小分けにして諸処にあふれてきました。整理というより処分を迫られているのですが,過去の事績が必要な場合があるので,辞任するまでは我慢せざるを得ません。
 幸か不幸か,身体における余分な貯め込みは程よいところで止められているようです。ただし腹回りが程ほどに貫禄を醸し出しています。身体だけは1秒も抜くことなく使用中ですので,知らないうちに余分なものが積もることは避けています。転がる石に苔むさず,ということです。ここでは,苔は無用なものという意味で,ことわざを持ち出しています。
 ところで,A rolling stone gathers no moss."(転がる石はコケむさない)は、イギリスや日本では「落ち着きなく動き回っているものには能力は身につかない」という意味です。一方、アメリカでは「いつも活動的に動き回っている人は持っている能力を錆び付かせることはない」という意味になります。これは、環境の変化を良い物と捉えるか悪いものと捉えるか、に由来する違いである。つまり,苔を有用なものとするか無用なものとするかという価値観の違いです。
 塵とか苔とか,そのものではなく,表意するものが良いものか悪いものかが状況次第という融通無碍さは,気をつけないといけません。

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(2012年07月01日号:No.640)