家庭の窓
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手元に,山地明氏の「人生百話」からの抜き書きがあります。
ロンドンのある雑誌が,あなたにとっての家庭とは何ですかと質問したところ,たくさんの答が返ってきた。編集者が7つを選んだ。
・家庭とは争いが締め出され,愛がこもった世界。
・家庭とは小さいものが大きく,大きいものが小さい場所。
・家庭とは父の領土,母の世界,子どもの天国。
・家庭とは一番苦情を言えて,一番良い扱いを受ける場所。
・家庭とは私たちの愛情の中心。
・家庭とは胃が三度の食事を得る場所。
・家庭とは人間の欠点や弱点が人間愛のマントの下に隠される地上唯一の場所。
いずれも理想的な家庭。問題はこのような家庭が少なくなっていること。
無縁社会に片足を踏み入れている今,上記のような家庭とはという振り返りさえも縁が薄くなっています。家庭とは,改めて考える必要も無く存在するものであったはずです。例えば,空気のように,例えば心臓のように,あることを意識することはないものがあります。そして,そういったものはおおむね本質的に重要なものです。なくてはならないものです。意識し始めたら要注意です。心臓の動きが気になるというのは,不健康です。家庭の有り様ということが気になる時,家庭は不健全になっています。
ところで,家庭の恵みを受け取っていたのに,家庭を作らない人が増えています。結婚しないで独身のままで年老いていきます。やらずぶったくりの厚顔無恥ですが,その付けはやがて自分に降りかかってきます。独り身は気楽でしょうが,引き替えに構ってもらえないという孤独を受け取ることになります。無縁ということは,自分の存在を誰にも気に掛けてもらえないということです。いてもいなくてもいい人なのです。周りの人をそう思っている者が,周りから気に掛けてもらえないのは当然です。
家庭とは,人が寄り添うというスタイルです。いて欲しい人同士がその気持ちを絆として結び合う生活,そこに家庭が生まれます。人恋しい,その具体的な実践が家庭を創ります。
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